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 たしかに、私たちは自由と選択を愛しているが、それと同じくらい、単純に機能し、信頼でき、シームレス〔訳注 ユーザーが複数のサービスを違和感なく統合して利用できること〕なものを愛しているのだ。そして、自分が愛するものにお金を払わなければならないのならば、それでかまわないと思う人が増えてきた。皆さんもお使いの携帯電話やケーブルテレビの料金には無頓着じゃありませんか。

 ジョナサン・ジットレインはその著書、『The Future of the Internet』(邦訳『インターネットが死ぬ日』、早川書房)において、次のように記している。「ウェブブラウザを、PCの進化の頂点だと考えるのはまちがいだ」。今日のインターネットは無数の閉ざされた庭で作られていて、その中で、ウェブは原則でなく例外にすぎない。

 オンライン世界のようにネットワーク化された市場では独占が起こりやすい。ネットワーク効果の欠点は、富めるノード(ネットワークの参加主体)がますます富むことだ。メトカーフの法則は、ネットワークの価値は接続の2乗に比例すると言っているが、そこは勝者総取りの市場となり、ナンバー1プレーヤーとナンバー2の差は大きく、その差は開く一方となる。

(中略)

 アプリケーション層においては、オープンなインターネットはフィクションにすぎない。それは私たちが、ウェブとネットを混同しているだけだ。

 iPhoneのアプリがツイッターのAPIと話すなどM2Mのコミュニケーションが始まったのは、すべて支配のためだった。サービスの名のもとに、すべてにAPIがついてくるので、ツイッターやアマゾン、グーグルなどの企業は意のままにその利用をコントロールできる。私たちは質の高いサービスの新しい形を選んでいるところなのだ。

 カスタムアプリケーションは、コンテンツのキャッシュとローカルコードのおかげで機能する。ウェブの代わりに、iPhoneのアプリを使うたびに、私たちはウェブを捨てることになる。

 よりよい経験こそが有料に値するのだ。それが現金で払う形であろうと、非ウェブの基準に暗黙の承認を与える形であろうとも。

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本記事はコンデナスト・ジャパン発行の『GQ JAPAN』2011年1月号に掲載された「The Web Is Dead (ウェブよさらば!?)」のiPad向け全訳版(翻訳:高橋則明氏)を一部抜粋したものである。著者のChris Anderson氏は米「WIRED」誌の編集長、Michael Wolff氏は同誌の協力編集者(contributing editor)。原文“The Web Is Dead. Long Live the Internet”は2010年8月にWIREDに掲載された。