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 ジョブズは完璧にその隙間を埋めている。

 他の技術屋は、明確にメディアビジネスのほうに舵を切っていても、自分たちをシステムの間借り人かサードパーティのまとめ役と見ていて、しばしばコンテンツにかかわることを慎重に避けている(例えば、グーグル社CEOのエリック・シュミットは、グーグルはコンテンツビジネスをしていないと主張している)。

 一方、ジョブズはこの一世代のあいだで最も成功したメディアビジネスを2つも築いた。コンテンツを配信するiTunesと、映画スタジオのピクサーである。

 2006年にピクサーをディズニーに売却したときに、ジョブズは、ディズニーという既存メディアのコングロマリットで最大の個人株主になった。彼の個人資産の多くは、この伝統あるメディア持ち株会社にあるのだ。

(中略)

 商業ウェブが始まって以来、テクノロジーはコンテンツの影を薄くしてきた。その中で、新しいビジネスモデルは、コンテンツや製品の本来の姿を見せて、テクノロジーの影を薄くさせようとしている。

 ジョブズとザッカーバーグはそれを実現するために、古いメディア界の大物のように、自分たちの製品をすべての面で手直しして、よりよいデザインと管理と洗練された経験を提供している。

 音楽ストリーミングサービスのSpotify、映画をユーザーのコンピュータ・ディスプレイに届けるNetflix、ブルーレイ・プレイヤー、Xbox360といったワクワクするインターネットサービスが台頭したことも、私たちをウェブから引き離した。

 私たちはすでに存在している世界に戻りつつある。私たちの関心は(比較的)短いあいだ、ウェブがもたらす変化に向いていたが、いまや音楽や映画のもたらす変化を追うようになった。

 長い旅も終わり、私たちは家に帰ろうとしているのかもしれない。

>>前編(クリス・アンダーソンが語るWebの行方)へ

本記事はコンデナスト・ジャパン発行の『GQ JAPAN』2011年1月号に掲載された「The Web Is Dead (ウェブよさらば!?)」のiPad向け全訳版(翻訳:高橋則明氏)を一部抜粋したものである。著者のChris Anderson氏は米「WIRED」誌の編集長、Michael Wolff氏は同誌の協力編集者(contributing editor)。原文“The Web Is Dead. Long Live the Internet”は2010年8月にWIREDに掲載された。