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Q ソフト開発会社で忙しい日々を過ごしています。先日,同期入社の友人を,クモ膜下出血で亡くしました。私と同じ36才という若さでした。その前日まで元気だったのに,突然の訃報に絶句しています。何か予防法はあるのでしょうか。(男性,36才,SE)

 脳は,3層の膜で覆われています。軟らかい脳が頭蓋骨と直接こすれることを防いだり,外からの衝撃を緩和するためです。これらの膜を,内側から順に「軟膜」「クモ膜」「硬膜」と呼びます。

 クモ膜下出血はその名の通り,何かの原因で出血が起き,クモ膜と軟膜の間に血液が侵出した状態を言います。30~40歳代の働き盛りを襲う病気の一つでもあり,相談者の友人のように,それが原因で命を落とすことも少なくありません。

 この疾患の多くは,脳動脈の枝分かれ部分が血圧などの理由で内側から押されてコブのようにふくれあがってしまった「脳動脈瘤」が破裂して起こります。このほか,先天的な奇形の脳血管が破れて出血するケースもあります。これらの内因性の出血とは別に,交通事故などによる頭部への強い衝撃が原因で出血する「外傷性クモ膜下出血」もあります。

 クモ膜下出血の主な症状は「頭痛」です。外傷性の出血を除き,「○時×分に突然強い頭痛が起きた」と自覚できるくらい,発症がはっきりしているのが特徴です。それも,ほとんどが過去に経験したことのないほどの激しい頭痛で,「ハンマーで後頭部をたたかれたような頭痛」と表現する人もいるくらいです。頭痛が起きた後も意識が保たれる場合と,すぐに意識がなくなる場合があります。

 これまでにない強烈な頭痛を感じたら,すぐに専門の病院,できれば脳神経外科で診察を受けることです。医師は,CTスキャンやMRIによる脳の“輪切り画像”をもとに,出血の有無や出血している場所,出血程度,原因などを診断します。

 処置が早ければ早いほど,予後も良好であることが分かっています。発症から診察までの時間をいかに短縮するかが生死を分けます。ちゅうちょせず救急車を呼んでください。

 治療は基本的に,外科手術です。脳動脈瘤からの破裂の場合,開頭による「脳動脈瘤クリッピング術」を行います。これは,脳動脈瘤の根元を特殊なクリップで留める方法です。このほか,太ももの付け根の動脈からカテーテル(医療用の管)を挿入し,それを通じて金属製のコイルや小さな風船を脳動脈瘤まで送る方法もあります。

 クモ膜下出血の引き金となる最大の危険因子は「高血圧」です。血圧が高いと,脳動脈瘤に大きな負荷がかかり,破裂する可能性が高まるからです。このため,クモ膜下出血を予防するには,健康診断を定期的に受診して血圧をチェックすることが第一。もし,高血圧を指摘されたら,食事療法や薬による内服治療を徹底することです。

 脳動脈瘤や,血管に関する先天性の奇形は,誰にでもあるわけではありません。しかし,用心するに越したことはありません。脳血管系の疾患を持つ家族歴がある人は,特に注意が必要でしょう。

 気になる人は,「脳ドック」を受診すれば,脳動脈瘤の有無を確かめられます。日本脳ドック学会が,脳ドックの検査内容や,脳動脈瘤が見つかった場合の対処法などをまとめた「脳ドックのガイドライン」を公表していますので,参考にしてください。

浜口伝博
産業医
産業医科大学医学部卒業,専属産業医として東芝,日本IBMに勤務し,産業医活動のほか,健康管理システム開発を手掛ける。2005年9月からハマーコンサルティング代表。日本産業衛生学会理事,日本橋医師会理事,産業医科大学非常勤講師。著書は「健康診断ストラテジー(バイオコミュニケーション,共著)」など多数。日本産業衛生学会認定指導医,労働衛生コンサルタント