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Q 1年前に胃潰瘍と診断され,通院し始めました。それ以来,担当医師に処方される内服薬をきちんと飲み続けているのですが,ほとんど効果がありません。仕事が忙しくなると痛みがひどくなり,食事もとれない状態になります。早く治したいのですが…。(女性,28歳,SE)

 胃潰瘍は,過剰に分泌された胃酸によって胃粘膜が傷ついた状態を言います。その原因は,ピロリ菌によるものや不摂生,非ステロイド性抗炎症薬の使いすぎなど様々です。胃潰瘍の治療には,胃液の分泌を抑える自律神経遮断薬や,胃酸を中和する制酸薬などを内服することが一般的です。

 しかし,質問者のように,そうした薬剤を長期にわたって服用しているにもかかわらず症状が改善しない場合,胃潰瘍の原因は心理的なストレスかもしれません。具体的には,「心身症」の疑いがあります。心身症は,強い不安やストレスにより,身体各部の機能や器質に障害が生じる病気です。

 心身症による胃潰瘍は心因性であるがゆえに,通常の内科治療だけでは治癒しません。専門家による心理療法や抗不安薬を併用する必要があります。SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)と呼ぶ抗うつ剤を用いることもあります。

 心理的要因を取り除かずにいると,潰瘍が進行して胃壁に穴が開く「穿孔」を引き起こします。穿孔は,激痛をもたらすだけではありません。穿孔した部分から腹膜炎などの感染症を併発する危険があります。質問者は,診察を受けている医師に相談し,できるだけ早く心療内科を訪ねてください。

 心身症になりやすい人は,「自分の気持ちや感情を言葉で表現できない」「不安や葛藤を意識下に抑圧してしまう」といった「失感情症」の傾向があります。例えば,「一生懸命仕事をしているのに認められない」といった不安や葛藤,「上司が同僚ばかりかわいがる」といった怒りやねたみを感じても,それを言葉や態度に出さずに我慢したり,あえて考えないようにしてしまいます。こうして抑圧された敵意が身体的症状となって噴き出すのです。

 に,失感情症の程度を見るテストを用意しました。15項目について,当てはまるものは「はい」,当てはまらないものは「いいえ」を選び,それぞれの欄にある点数を合計します。

表●失感情症尺度
次のことについて、今あなたにどの程度当てはまりますか。あなたに当てはまる答えの番号に○印を付けてください。
表●失感情症尺度

 合計6~10点が,平均的な数値です。合計点が11点以上の人は,気持ちや感情を十分に表現できており,失感情症や心身症にはなりにくいタイプです。

 一方,合計点が5点以下の人は要注意です。ストレスをうっ積させやすく,失感情症や心身症になりやすい傾向があります。感じたことを口に出して誰かに伝えるなど,不快な感情をため込まないよう心掛けてください。

武藤清栄
東京メンタルヘルスアカデミー所長
1974年東洋大学社会学部卒,76年国立公衆衛生院(現国立保健医療科学院)衛生教育学科卒。民間相談機関の「心とからだの相談センター」主任カウンセラー,サンシャイン医学教育研究所,秋元病院精神科カウンセラーを経て,現在に至る。関東心理相談員会会長。日本精神保健社会学会副会長。著書に「雑談力」,「号泣力」(いずれも明日香出版社),「本音力」(ロゼッタストーン)など