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日経ニューメディア編集長 田中正晴

 2010年は、猛烈にデジタルテレビが売れた。その多くは、地上デジタル放送に加え、BSデジタル放送や110度CSデジタル放送も受信できるいわゆる3波共用受信機である。こうした受信機の普及は、地デジ/BSデジタル放送だけではなく、CSやケーブルテレビで展開される多チャンネル放送の行方にも大きな影響を与えだしている。

 3波共用受信機が普及した結果、CS多チャンネル放送の契約件数が大いに変動している。スカパーJSATが発表した2010年11月末の数字によると、東経124度/128度CS放送である「スカパー!」の累計契約件数は約230万、東経110度CS放送である「スカパー!e2」が約127万である。数だけで言えばまだスカパーの方が圧倒的に多い。しかし、11月末累計契約件数の2005年以降の推移を見ると、スカパー!は323万、323万、310万、284万、254万と減少を続け、2010年は230万となっている。一方のスカパー!e2は20万、31万、47万、72万、102万と増加の一方で2010年は127万になった。

 両方を合計すると、ほぼ約350万台で大きな変化はない。しかし、スカパー!の方がチャンネル数が多く、個々の番組供給事業者(番供)を見ると立場は様々だ。特にスカパー!のみで放送していてスカパー!e2で放送されていないチャンネルの番供には深刻な事態である。右肩下がりの中で、いったん赤字に転落すると事業継続が難しくなる。このまま放置しておくと、そろそろ撤退する事業者が相次ぐのではないか、という見方が広がりだしていた。

CS放送は体制の見直しへ、激動の一年に

 こうした中、スカパーJSATが行おうとしているのが、スカパー!のH.264への移行である。スカパー!では、従来からのSDTV放送がMPEG-2で展開されており、2008年10月からH.264によるハイビジョン放送をスタートさせた。動画像の符号化技術を最新のH.264に統一し、大規模な多チャンネルハイビジョン放送を展開するとともに、将来的にはSDTV放送もH.264にそろえようという計画である。

 2010年は、スカパー!の将来をどうするのかをめぐり、スカパーJSATと番供の間で協議が行われてきた。12月現在、既に議論は最終段階まで来ている。ここではH.264移行に加えて「サービスの魅力を増し加入数減少を食い止めたい」という思いで関係者がそれぞれの立場からの利害を超えて調整を懸命に行っており、協議が整えば2011年の早い段階で一般ユーザーにも魅力的な発表が行われる見通しである。

 一方のスカパー!e2など東経110度の世界では、2010年は新規BSの認定が行われた。2011年は、新規BSへの移行によって空く東経110度CS放送のトラポンを活用した110度CS放送の高画質化や再編および委託放送事業者の認定が行われる予定である。

 既に述べたとおり、スカパー!は減少を続ける一方なので、スカパー!e2の放送にかかわっていないチャンネルを持つ番供にとっては、110度参入のラストチャンスになるかもしれない今回は見逃す手はないだろう。そのため今年の110度CS放送の委託放送事業者の認定には希望者が殺到する可能性がある。今回参入を目指す事業者にとっては、110度CS放送の再編は、高画質化はほどほどにして多チャンネル化が進んでほしいと考える。

 一方、新たに110度CSに参入させたいというチャンネルを持たない事業者にとっては再編の目玉は高画質化であり、ハイビジョン放送化を目指す。こうした大きく二つの考えが錯綜する中で、東経110度CS放送の再編の議論が進む。

 ちなみに、新規BSの委託放送事業者が決まったことを受け、現在は110度CS放送の引越しに伴って空く帯域の整理案の検討が行われている。空いた周波数に対して、2011年春以降に委託放送事業者の募集が行われる見通しだが、このとき既存の110度CS放送事業者も高画質化を目指して手を挙げると見られる。再び引越しに伴い周波数が空くことになる。このため、今年は110度CS放送について複数回の委託放送事業者の認定が行われそうだ。