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伊藤 博/KDDIイースタンヨーロッパ

 KDDIは、2006年からモスクワ、サンクトペテルブルクを拠点とし、ロシア、CIS(独立国家共同体)全域で日系企業を中心にSI事業を展開している。

 私は2006年10月にロシアに入り、業務のかたわら現地の通信事情などを調査してきた。そこで感じるのは、ここ数年でロシア国内の通信事情が大きく様変わりしてきたことだ。

 2009年6月には、政府系持ち株会社であるスベヤインベストが、配下の長距離通信のロステレコムと7地域通信事業会社が合併合意したと発表した。これにより地域、長距離、国際を一手に担う巨大通信会社が誕生した。さらに携帯電話会社の一部を統合する可能性もあり、近く総合通信会社が誕生するかもしれない。

 固定系では、鉄道会社系の新興事業者トランステレコムが、長距離通信会社に続き、地域系通信会社の立ち上げに力を入れている。今後は、この2社による競争が激化しそうだ。

 移動体通信では、モバイルWiMAXが広がり始めた。モスクワ市内はほぼ全域、第2都市であるサンクトペテルブルクや他の一部地方都市でもサービスが提供されるなど、5年前と比較すると飛躍的に発展している。さらにロステレコム、メガフォンなどは次期オリンピック開催予定地のソチでLTE(Long Term Evolution)の実証実験を開始している。

 これらの動きを後押ししているのが、元大統領のプーチン首相が掲げた電子政府構想である。ロシアは今後2015年までこの目標達成のためFTTB(Fiber To The Building)やFTTH(Fiber To The Home)を積極的に展開し、国内の通信インフラを劇的に変えていこうとしている。

ビル会社と結託して通信を“独占”

 このような業界再編の動きや新技術の展開に反し、ロシアの大都市部にはまだ“負の遺産”が残っている。例えば、ビルごとに独占的にラストワンマイルサービスを提供する地域系通信事業者が存在する。ビル管理会社とこれら通信事業者が結託し、賃貸オフィス利用会社の電話やインターネットなどの通信サービス契約を独占している。このようなオフィスビルに入居している企業には、通信事業者の選択肢は無い。利用者は、サービス選択や料金面で著しく不便を被る。

 このため、私たちもローカル回線の手配に苦労する。長距離系通信会社や地域系通信会社、そして独占通信会社をすべて通さないと、見積もりも構築もできない。

 当局もこのような商習慣を問題視したのか、今年になって独占行為を禁止する法案が提出された。今後の進捗に期待しつつ、KDDIの活動も加速していきたい。

伊藤 博(いとう ひろし)
KDDIイースタンヨーロッパのモスクワ支店長兼サンクトペテルブルク支店長。2006年にKDDI欧州(ロンドン)からロシアへ横移動で着任し、2011年は赴任5年目を迎える。目標はロシアに進出するすべての日系企業が本業に集中するための、「情報通信関連の総合窓口」にすること。唯一の趣味は魚釣りで、休日ともなれば師匠であるロシア人運転手と近所の川や池へ釣行している。