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 NTT東西の光インフラを借りて競争事業者がFTTHサービスを提供する。この形態の「サービス競争」を促す施策を、どこまで大胆に実現できるのか。議論は2011年早々に情報通信審議会を舞台に繰り広げられる。2011年3月末までに決着を付けるスケジュールだ。

現在のルールではエリアに限界

 現在でも、NTT東西は光インフラを貸し出すことを義務付けられており、サービス競争への道は開かれている。だが実際のところは、KDDIが札幌や仙台など一部で展開しているにとどまり、サービス競争は部分的にしか進んでいない。現状の貸し出しルールはリスクが高く、需要が多いエリアでなければ競争事業者の参入が難しいからだ。

 戸建て向けの光アクセス網の仕組みは、1芯の光ファイバーを「局外スプリッタ」と呼ぶ装置で最大8分岐して使う「シェアドアクセス」方式が主流である。ただし、今のルールでは1社が1芯分、つまり8分岐をすべて借りなければならない。世帯が集中していない地域では、分岐分を埋められず採算を取りづらくなる。このため競争のエリアが広がりにくい。

 こうした状況について、KDDIやソフトバンクはかねてから、1分岐単位の貸し出しを求めてきた(図1)。分岐単位で接続料を設定すれば、少なくとも1芯単位より接続料を抑えられる。そうなれば参入リスクは減り、FTTHのサービス料金を大幅に下げられる可能性がある。

図1●競争促進策として分岐貸し議論が再燃
図1●競争促進策として分岐貸し議論が再燃
現在の加入光アクセスの貸し出し形態では競争事業者が参入しづらいとして、ICTタスクフォースでは改めて「検討すべき」とした。
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 KDDIやソフトバンクは、「より広いエリアでFTTHを提供できるようになる」(KDDIの岸田隆司渉外部企画グループリーダー)、「全国でFTTHを提供する道が開ける」(ソフトバンクBBの入部良也渉外本部副本部長)と1分岐貸しへの期待を示す。

 参入事業者が増えて競争が激化すれば、NTT東西もこれまで以上に積極的に競争せざるを得なくなる。設備稼働率が上がると同時に、競争によって料金が下がり、ユーザーが増えるという好循環に転ずる可能性もある。「光の道」の取りまとめで、「分岐回線単位の接続料設定を含めた接続料算定方法を見直す」と指示されたことから、KDDIやソフトバンクの期待は高まっている。

「1分岐貸し」は過去に議論も却下

 ただし、NTTグループとの交渉は難航しそうだ。1分岐貸しについては、2007年度に総務省でNGNの接続ルールを議論したときにも話し合われた。

 ここでは分岐回線単位の接続料設定について、「OSU共用」「OSU専用」「Bフレッツにかかわる機能の接続料化」という3種類のアイデアが議論された(図2)。OSU共用は、NTT東西を含めて複数事業者で設備を共用する方法。OSU専用は1芯単位で競争事業者が設備を借りるが、接続料は分岐数分だけで済ませる方法。Bフレッツの接続料化は、NTT東西のアクセス網と中継網を丸ごと土管として借りる方法だ。

図2●分岐回線単位の接続料は2007年度に議論
図2●分岐回線単位の接続料は2007年度に議論
3案が検討されたがいずれも却下された。「光の道」取りまとめを受けた議論で、これらが再浮上する可能性がある。
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 結果から言えば、2007年度の議論ではNTT東西や電力系通信事業者など設備事業者からの猛反対に遭い、3案すべてが却下された。OSU共用に関しては、事業者間で設備を共用することによってNTT東西が機動的に設備展開できなくなると見なされ、「義務化は現時点では不可欠とは言えない」と判断された。

 また、OSU専用は「適切な料金水準を合理的に設定することが難しい」、Bフレッツの接続料化は「NTT東西の設備は接続先を特定のインターネット接続事業者に限定できず、接続料設定が技術的に難しい」という理由から却下されている。このときは、代わりに接続料自体をある程度引き下げることで決着がついた。

 議論の難しさは、NTT東西をはじめ、これまでリスクを取って設備を敷設してきた事業者との間でどのようにバランスを取るのかという点にある。1分岐貸しの形態で安い接続料を設定すれば、設備を打つよりも借りたほうが得になるケースが増えるからだ。

 かつての議論の経緯を振り返ると、3案の中で最も実現性が高いのは「OSU専用」をベースにした案だろう。設備事業者の機動性を妨げない点で、理解も得られやすい。1分岐目の基本料と1芯単位の接続料のバランスをどのように取るのかがポイントになる。

FTTHにおける“マイライン競争”も視野に

 このほか、サービス競争を活性化させるためには、1分岐貸しに加えて、NGNのオープン化によって新たなサービス競争環境を作る道もある。FTTHにおけるマイラインのような競争環境だ。

 アクセス回線を収容するNGNのルーターから他社の中継網へと接続できれば、加入電話網のGC接続のような形態が可能になる(図3)。これによって、NGNをバイパスしてNTT東西の光アクセス網と他社の中継網を組み合わせた、電話サービスやインターネット接続サービスができる。NGNのコストを省けるので、安価に提供できる可能性がある。

図3●NGNをアンバンドルすることでFTTHの“マイライン競争”も可能
図3●NGNをアンバンドルすることでFTTHの“マイライン競争”も可能
収容ルーターからNGN内部を通らず他社網へと抜けられる相互接続点を設ければ、他社の中継網とNTT東西の光アクセス回線を組み合わせた、電話サービスやインターネット接続サービスを安く提供できる可能性がある。マイラインのような競争ができるようになる。
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