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  日本では「胡散臭い元ハッカー」といったネガティブな印象のあるアサンジだが、欧州の独立系メディアや反権力志向の強いジャーナリストの間では今や「ヒーロー」である。アサンジが一部のメディア関係者を魅了するのはなぜか。そして一体何を目指しているのか。

菅原 出/国際政治アナリスト


 2010年12月16日、英国で拘束されていたウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジが保釈された。ロンドンの高等法院前に集まっていた報道陣の前で、アサンジは保釈決定の文書を高々と掲げ、「勝利」の笑みを浮かべた後、防弾車両に乗りこんでイングランド郊外へと消えていった。

 アサンジが向かったのはロンドンから北東190キロほどに位置するイースト・アングリアのエリングハム(Ellingham)村の近くにあるエリングハム・ホールであった。ここは18世紀に建てられた240平方メートルもある豪華な3階建てのお屋敷で、寝室だけで10部屋もあると伝えられている。スウェーデンへの移送をめぐる尋問は2011年1月11日に1回目が行われる予定だが、アサンジはしばらくの間この屋敷に滞在して活動を続けることになる(編集部注:本記事の初出は2010年12月12日)。

 この豪邸のオーナーは元英国陸軍の将校でビデオ・ジャーナリストのボーガン・スミス(Vaughan Smith)である。同氏はロンドンを拠点とする「独立と透明性」を求めるフリー・ジャーナリストたちの集まりである「フロントライン・クラブ」の創設者であり、アサンジは過去数カ月、同クラブの施設を頻繁に利用していた。スミスは1500名におよぶ同クラブの会員を代表してアサンジへの支持を表明し、エリングハム・ホールをアサンジに提供したことを明らかにしている。

 アサンジを支持しているのはスミスやフロントライン・クラブ所属のジャーナリストたちだけではない。24万ポンド(約3150万円)の保釈金は、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーの元妻で映画監督、人権活動家として名高いビアンカ・ジャガー、反ブッシュ映画で有名な映画監督マイケル・ムーア、名高い作家で慈善活動や人権活動家としても知られるジャマイマ・カーンなど世界中の裕福なメディア関係者がカバーした。

 またイギリスの出版社オーナーであるフェリックス・デニスやノーベル生理学・医学賞受賞者のジョン・サルストン博士もアサンジの裁判費用を負担することを明らかにしているし、オーストラリアの映画監督ジョン・ピルジャーらは、「ジュリアン・アサンジ防衛基金」を設立して、アサンジを支援するための資金集めに奔走している。

 日本では「機密情報を暴露した胡散臭い元ハッカー」といったネガティブな印象で語られることが多いようだが、欧州の独立系メディア、反権力志向の強い映画監督やジャーナリスト、リベラルな人権活動家や反戦活動団体の間では、アサンジは今や「ヒーロー」であり圧倒的な人気がある。ウィキリークスの背後には彼らの活動を支える世界的なネットワークが存在するのである。

 アサンジがこうした一部のメディア関係者を魅了するのはなぜなのか。「メディア界の革命児」と評されるジュリアン・アサンジは一体何を目指し、ウィキリークスとはどのような組織なのだろうか。