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 10回にわたる連載を通して、優れた交渉者に必要なインナーワーク(ビジョン・戦略・利害関係者分析など)とアウターワーク(主張・質問・傾聴・共鳴など)についてかなり網羅的に学んできました。

 交渉プロセスは頭脳ばかりではなく感情や身体的要素も含む総合的なコミュニケーションであり、単なる勝ち負けを超える創造的な営みであることもよく理解できたことと思います。

 どんなに用意を周到にしても、どれだけ注意深く完璧なコミュニケーションを心がけても、交渉は相手がいて初めて成立することであり、自分一人で成功できません。交渉相手は必ずしも協力的な人や組織とは限りません。むしろ非協力的であったり、敵対的であったり、無関心であったりすることがよくあります。

 自分がどれだけ優れた交渉者であっても、相手と状況次第で成功はおぼつかない、ということでしょうか。

 連載第11回の今回は、どんな交渉場面においても話し合いを成功に導く交渉姿勢の極意を紹介します。

因果関係の逆転

 われわれは通常、過去に原因があって未来に結果が生じる、と考えています。過去にいいことをしたから未来にいいことが起こる。過去に悪いことをしたから未来に悪いことが起こる。もちろんこれは間違いではありませんよね。原因があって結果がある。時間は過去から未来に向かって流れています。

 しかし、システム論においては、因果関係は直線ではなく、円環的な連鎖である、と考えます。われわれがいつも原因だと思っているものが実は結果であり、結果だと思っていることが実は原因であり、ひとつのことが同時に原因であり、結果であるということです。

 ちょっと何のことだか分かりませんね。説明しましょう。