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 標準化戦略や周波数政策など情報通信分野を幅広く研究し、理事長を務める情報通信政策フォーラム(ICPF)などを通して積極的な政策提言でも知られている東洋大学経済学部の山田肇教授。現在の総務省による電波行政は、実は日本の電波産業の競争力を阻害しており、それを解消するためにも周波数オークションを導入すべきと話す。そんな山田教授に、周波数オークションの利点を聞いた。

(聞き手は堀越 功=日経コミュニケーション


総務省の現在の電波行政が、どうして日本の産業競争力を阻害していると言えるのか。

東洋大学 経済学部 教授 山田肇 氏
東洋大学 経済学部 教授 山田肇 氏

 日本の無線機器業界や無線事業者は、総務省がある周波数帯でこういう免許を与えると分かってからでないと機器開発を始めない。ある無線機器メーカーの研究開発部門の担当者は、総務省の予算が付いてからでなければ、研究開発をやらないという。

 それでは最初から技術やビジネスの可能性を奪ってしまう。結果的に日本からはオリジナルな無線技術やビジネスがタイムリーに生まれにくくなっており、政府が決めた無線ビジネスしか広がらない。このように総務省の許認可権が大きいことで、産業の発展が阻害されている点が最大の問題だ。

 例えば米国の無線ベンチャーなどは、無線システムの免許の目途も立たないときから勝手に開発する。技術に自信があれば、オークションで周波数帯を確保できると考えている。政府が決めた枠組みではなく、オークションのような制度があるからこそ、未来を考えた研究開発を先行して進められる。この差は大きい。

 オークション制度を導入すれば、落札した事業者は一番短い期間で効率良く利益を上げる方法を考える。優れた技術を自分で選択し、ビジネスプランを立てるようになる。

実際にオークション制度を導入する場合、関係する通信事業者や総務省にも影響が及ぶ。どのように整理すればよいと考えるのか。

 オークション制度によって影響を受ける主たる関係者は、国民、総務省、放送事業者、通信事業者だ。

 まず国民については、新サービスが生まれて国庫収入が生まれるのでおおむね満足するだろう。

 総務省については、オークション制度の導入によって、現在の「総務省による裁量行政」という舵取りができなくなる。これによって権益が失われるのは確かだ。しかしその代わりにもっと大きな権益が生まれると考えている。

 例えば、周波数帯の資産価値を十分に生かしているのか、事業者の利用状況を監視する役割だ。現在も電波利用調査を行っているが、「あなたは電波を使っていますか」と事業者に問う程度。一歩踏みこんで「どのくらいの頻度で使っていますか。この程度だったら、他の周波数帯に移ってください」という、周波数帯を発掘する役割が生まれる。

 さらにはオークションによって国庫収入を得られる。省庁の中で財務省が力を握っているのは税金を集めているから。他の省庁はそれを使っているだけだから、財務省に頭が上がらない。しかし自分でお金を生み出せれば、総務省は新たな権益を得ることになる。