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ISDB-Tマルチメディアフォーラムは、2010年12月6日、VHF帯ハイバンドを利用する「全国向けマルチメディア放送」の運用規定である「ISDB-Tmm運用規定案」の希望者に対するCD-ROMによる配布を開始した。通常、運用規定はARIBでの標準化後に公開されるが、ISDB-Tマルチメディアフォーラムは、ARIBでの標準化前にISDB-Tmm運用規定案の公開を行った。目的は、地上デジタルテレビジョン放送の完全デジタル化後早期にマルチメディア放送サービスを開始する環境を整備するために、モバイルマルチメディア放送の受信機開発、及びサービス開発に資することとしている。ファイルキャストなどを含むマルチメディア放送は初めての試みであり、この規定案を基に、そのサービス概要を解説する。第1回は、規定案の概要を述べる。

表1●ISDB-Tmm運用規定の構成
表1●ISDB-Tmm運用規定の構成
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 携帯端末向けのマルチメディア放送は、地上アナログテレビジョン放送終了後に跡地となるVHF帯ローバンド(90M~108MHz)の18MHz幅とVHF帯ハイバンド(207.5M~222MHz)の14.5MHz幅で実施される予定である。このうちVHF帯ハイバンドを利用する「全国向けマルチメディア放送」は、既報の通り、NTTドコモをはじめ、フジテレビ、ニッポン放送、伊藤忠商事、スカパーJSAT、電通などが出資するマルチメディア放送(mmbi)が受託放送事業者として、2010年9月9日に総務省から認定された(なお2011年1月11日にmmbiは、受託国内放送事業を運営する子会社として、会社分割の手法によりジャパン・モバイルキャスティングを設立している)。ISDB-Tマルチメディアフォーラムがまとめた運用規定案は、この放送に向けたものである。

 ISDB-Tmm運用規定は、日本の地上デジタル放送方式「ISDB-T」をベースとした「ISDB-Tmm(ISDB-T for Mobile Multimedia)放送」の運用面での技術規定書であり、ARIBの運用規定(TR:TECHNICAL REPORT)として標準化する目的で作成したものである。なお、ISDB-Tマルチメディア放送の標準規格は、昨年11月にARIB STD-B46「移動体・携帯端末向け地上マルチメディア放送のセグメント連結伝送方式」として発行されており、ARIBの運用規定として2011年の早期に発行される予定である。

 このISDB-Tmm運用規定は、表1に示すとおり、第零編から第十二編で構成されている。なお、第六編「双方向通信運用規定」と第九編「送信運用規定」は、欠番となっている。

ISDB-Tマルチメディア放送サービスの概要

図1●ISDB-Tマルチメディア放送のシステムイメージ
図1●ISDB-Tマルチメディア放送のシステムイメージ
出典: ISDB-Tmm運用規定「第零編マルチメディア放送の基本概念と共通事項」の図2-4「マルチメディア放送におけるシステム概念図」を基に著者が作成
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 全国向けに展開する予定のISDB-Tmmに基づく放送は、現在のワンセグと異なり有料放送が主となる見通しである。移動受信可能な端末を前提とし、デジタル放送と通信の双方を利用することで、放送時間や利用場所に拘束されることなく、コンテンツやサービスにアクセスできることを実現する。また、マルチメディア放送は、ワンセグよりも高画質なリアルタイムのストリーミング放送や5.1chサラウンド放送などの高品質なリアルタイム型放送と、IPパケットを使った映画や音楽、ニュース、電子書籍といったコンテンツのダウンロード、メタデータを使ったVOD(ビデオ・オンデマンド)サービスなど様々なコンテンツを受信機に蓄積可能な蓄積型放送の大きく2種類の放送サービスを提供できる(図1)。

 蓄積型放送では、放送波を介してコンテンツを受信機に送り届け、内蔵メモリやハードディスクなどの記憶装置に蓄積した後に視聴・利用するサービスで、視聴者は時間や場所を選ばず、蓄積されたコンテンツを視聴・利用することが可能となる。また、ISDB-Tマルチメディア放送は、1チャンネルで利用できる帯域を時間帯によって可変にできる。ユーザーが眠っている深夜にリアルタイム放送枠を減らし、空いた帯域を使い大容量の映画やドラマなどのコンテンツを蓄積型放送で配信し、ユーザーの嗜好情報をあらかじめ端末に登録しておくことで、好みの番組だけが蓄積されるイメージである。

リアルタイム型放送と蓄積型放送の二種類のサービスを提供

 マルチメディア放送が想定するサービスのうちリアルタイム型放送は、サービスタイプとして運用規定では「映像リアルタイム放送型サービス」、「音声リアルタイム放送型サービス」、「独立データ放送サービス」及び受信機のソフトウェア修正を行うサービスである「エンジニアリングサービス」が規定されている。また、蓄積型放送のサービスタイプとしては、「蓄積型放送サービス」に加えて、EPG(電子プログラムガイド)やECG(電子コンテンツガイド)メタデータを放送する「EPG/ECGメタデータサービス」が規定されている。

 蓄積型放送の基盤は、国際標準化団体であるTV-Anytime Forumで1999年~2005年に策定し、ETSI(European Telecommunications Standards Institute、欧州通信規格協会)において国際標準規格化、2005年にARIBにて「サーバー型放送における符号化、伝送及び蓄積制御方式(ARIB STD-B38)」と「サーバー型放送技術資料(ARIB TR-B27)」となったサーバー型放送規格をベースとする。いわばモバイル向けサーバー型放送サービス規格とも言えるだろう。

ISDB-Tマルチメディア放送受信機要件

図2●ISDB-Tマルチメディア放送の利用帯域イメージ
図2●ISDB-Tマルチメディア放送の利用帯域イメージ
出典: ISDB-Tmm運用規定「第零編マルチメディア放送の基本概念と共通事項」の図2-2「利用帯域イメージ」を基に著者が作成
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 ISDB-Tマルチメディア放送受信機は、携帯電話上に実装される携帯電話受信機、カーナビなどに実装される移動型受信機、その他にはマルチメディア放送専用の受信端末などが想定される。ISDB-Tマルチメディア放送受信機は、13セグメント放送の受信(部分受信階層の受信を含む)、または1セグメント放送の受信、もしくはこれらの放送全てを受信できることが条件となっている(図2)。

 ISDB-Tマルチメディア放送では、放送で取得したコンテンツの提示、利用が基本となるが、各種リソース(各種鍵、契約情報に基づく各コンテンツの利用可否情報、蓄積型放送の補完データなど)を通信で取得し放送を補うことにより、通信機能を保有するマルチメディア放送受信機の特長を活用した多種多様なサービスの提供を行うことも可能である。マルチメディア放送のサービスを享受するため、通信機能を持っていることも条件となる。

 また、蓄積型放送については、放送波を利用してコンテンツが伝送され、受信機内のメモリやHDDなどの記憶装置に蓄積されるが、その蓄積されたコンテンツが不完全な場合、つまり正しくコンテンツが蓄積されなかった場合には、通信により欠損データを補完することで、コンテンツの伝送を補うことを可能とする「蓄積コンテンツ補完」という機能を放送事業者が提供することができる。そのため、放送事業者が本機能を提供した場合、受信機は蓄積コンテンツ補完を行う必要がある。