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 システム開発プロジェクトにかかわらず、普段の仕事のなかで時折「ん?」と、思考が一旦止まってしまうことがある。その時によって多少変わるが、「これは何かおかしくないか?」「大丈夫かな?」と感じているのだ。

 そのほとんどがちょっとした疑問であり、取り越し苦労で終わることも少なくない。しかし、そのちょっとした疑問を放置したために、後々になって取り返しのつかないことになってしまうケースが存在するのもまた事実である。

 この思考が一旦止まる「ん?」というポイントは人それぞれである。全く気がつかずに通り過ぎる人も入れば、一旦立ち止まってはみたものの「大したことはない」と通り過ぎてしまう人もいる。どんなに小さな疑問であっても、「念のため手を打っておこう」と取り上げる人もいる。

 そうした「ん?」が、プロジェクト運営に全く影響を及ぼさないささいなことであれば問題ないが、そうでない場合には小さいながらも「異常」として認識する必要がある。

見積もりレビューで「ん?」と感じたDさんのケース

 小さな疑問を異常として認識できなかったばかりに失敗してしまったDさんの例を紹介しよう。小規模システムのハードウエア老朽化に伴うリプレイス案件で、これを機会にミドルウエアを別の製品に置き換えるというプロジェクトだった。DさんはこのプロジェクトのPM(プロジェクトマネジャー)であったが、当時Dさんは別の大型案件のPMを兼ねていたため、実質的にはPL(プロジェクトリーダー)がプロジェクトを仕切っていた。

 Dさんは、システム自体が小規模でハードウエアのリプレイス案件であり、大きなリスクはないとの判断から、PLにプロジェクトを任せきっていた。

 そんな中、そのプロジェクトの見積もりレビューを行っている時、「ん?」と思うところがあった。それは「他システムとのインタフェース作成工数」が意外と少ないという点であった。既存システムに連携しているシステム数から考えると、「何となく少ない気がする」というレベルのものだった。

 この点についてPLに確認すると「大丈夫です、問題ありません」との回答だった。Dさんは「分かった、だが問題があるようなら早めに報告してほしい」とだけ伝えた。

 結合テストフェーズに入り問題が判明した。仕様書には書かれていない、他システムとのインタフェースが存在することが見つかったのである。そのインタフェースは既存システムが長年運用されていく中で、保守担当者によって作られたものであり、発注者であるユーザーは全く認識していないものだった。

 当該インタフェースを作った当時の担当者は誰も残っていなかったので、リプレイス対象から完全に抜け落ちてしまっていたのだ。

 こういう時こそ、PMが過去の経験を生かしてアドバイスしなければならない。Dさんは形だけとは言いながらもPMである。なのにPLの言葉をうのみにして、詳細な調査を指示しなかった。Dさんのミスだった。