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 今回は、4タイプの代表的なFMCの実現手段のうち、「モバイルVoIP型FMC」について詳しく見ていく。

 モバイルVoIP型FMCでは、続々と登場するスマートフォン向けのSIPに準拠したIP電話アプリケーションを使う。SIPは、IPネットワーク上で電話の発信や着信を制御する仕様を指す。このアプリを搭載したスマートフォンをIP内線電話機として、企業の拠点に置いたSIPサーバーに収容する。つまりモバイルVoIP型FMCは、サービスとして通信事業者が提供するものではなく、ユーザーやインテグレータが自ら組み合わせ構築するソリューションである。

図1●SIP準拠のIP電話アプリケーションをインストールしたスマートフォンを使った「モバイルVoIP型FMC」の特徴
図1●SIP準拠のIP電話アプリケーションをインストールしたスマートフォンを使った「モバイルVoIP型FMC」の特徴
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 スマートフォンにアプリケーションをインストールして利用する点は、前回紹介した「アイデア型FMC」と同じ。ただし、アイデア型FMCでは携帯電話事業者が提供する電話回線を使うのに対し、モバイルVoIP型FMCでは、無線LANや第3世代携帯電話(3G)のパケット通信網を使い、IPパケットに変換した音声データをやり取りすることによって通話を実現する。

 モバイルVoIP型FMCでは、スマートフォンを内線電話機そのものとして扱うため、スマートフォンから固定電話回線を経由した外線発信をしたり、多彩なSIPサーバーの内線機能を活用したりできるメリットがある(図1)。

無線LANデュアル端末の代替に

 既に、NTTドコモなどの無線LANデュアル端末を使ったFMCを導入している企業なら、SIP準拠のIP電話アプリをインストールしたスマートフォンを、デュアル端末の代わりに利用できる。SIPサーバーにスマートフォンを収容し、フルに内線機能を使いたいユーザーが検討すべきタイプのソリューションだといえる。以前話題を呼んだ無線LANデュアル端末を使うFMCは、端末のバリエーションの少なさがネックの一つだった。最新スマートフォンを活用できれば、バリエーションの問題は気にならない。

 iPhone向けの「App Store」など各スマートフォンのアプリケーションマーケットには、世界中の開発者が公開したSIP準拠のIP電話アプリが日々追加されている(表1)。このスピード感や広がりは、オープンな開発環境を持つスマートフォンならではだ。

表1●iPhone、Androidで利用できる主なSIP準拠のIP電話アプリケーション
表1●iPhone、Androidで利用できる主なSIP準拠のIP電話アプリケーション
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 日経コミュニケーションでも実験的に、これらのIP電話アプリを使った内線環境を構築してみた。SIPサーバーに「CommuniGate Pro」を用い、端末側にはiPhone向けIP電話アプリ「iSip」、Android端末向けIP電話アプリ「Sipdroid」使い、無線LAN環境で通話する形だ。

 SIPサーバーにユーザー名とパスワード、内線番号を登録。さらに、IP電話アプリ側でSIPサーバーのアドレスと上記で設定したユーザー名、パスワードを入力すれば、設定完了である。IP電話アプリから設定した内線番号に発信すると、問題なくもう一方の端末に着信できた。無線LAN環境下での通話は、通常の携帯電話同士の通話とほとんど変わらない音質だった。

 スマートフォンに搭載したIP電話アプリは常時起動しておかなくても構わない。例えばiSipは、着信があるとポップアップで通知する仕組みを備える。ポップアップをクリックすると、IP電話アプリが起動して実際の通話ができる。

 こうしたスマートフォンのIP電話端末化の可能性に着目し、ソリューション開発に本腰を入れるPBX(構内交換機)ベンダーも出てきた。NECは、スマートフォンにSIP準拠のIP電話アプリを載せて、同社製のSIPサーバーと連携できるソリューションを2010年後半以降に提供しようと準備している。「現在、様々なSIPクライアント(IP電話アプリ)をテストしている最中。十分な内線機能を実現するために、SIPクライアントを独自開発することも考えている」と同社のUNIVERGEサポートセンター第一システムサポート部の嶋田健久マネージャーは話す。