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前号のあらすじ JUAS産業の社長に就いた浦山は、運用コストの半減を命じる。創業者の息子である福井CIOは、運用子会社を切り出し、ベンダー、中堅スーパー・マーケットを加えた3社の共同出資会社を設立するプロジェクトを進める。ところが、運用共同化の効果がなかなか表れないまま、現場は徐々に疲弊していった。

 障害報告書が山積みになっていた。スリーアローズの副社長である金山は机の上をにらんだままだ。これまでの経験だとシステムの稼働から3カ月、遅くとも6カ月以内に障害を収束させなければならない。そうでなければシステムを頼りにしている現場が疲弊する。さらにそれが会社の業績低迷につながってしまう。

 3社共同出資の運用子会社設立から1年が経過していた。飛行機にたとえるなら、巡航速度で飛ぶ状態であるべきだ。しかし、現状は滑走路をカタカタと歩き回っているようなものだ。

 (飛ばなければ飛行機じゃない!)

 金山は机をたたいた。驚いて部下が振り向いた。

 この1年間というもの、赤字続きであった。JUAS産業から出向している金山は、親会社に業績を報告する義務がある。それ以前に経営者として会社を黒字にしなければならなかった。

 新会社設立時の事業計画書には、「半年で黒字転換」とある。その前提として、オープン化によるコスト削減があり、さらに共同センター方式による資源共有化がある。

 しかし、オープン化は必ずしもコスト削減につながらなかった。ハードウエア、OS、データベースなどの基幹ソフトウエアに関して、ヤマト事務機の製品を使わなければならないことが大きな理由だ。ベンダーが過半を出資している会社が他社製品を使うわけにはいかない。関連会社割引などといっても、もともとここの製品は他社製品よりも高価なのだ。オープン化のメリットがないのも同じだった。

 さらに、サーバーが分散したため、アプリケーションが増えるごとにサーバーを増設しなければならなかった。サーバーの台数は当初計画の1.5倍に膨らんでいた。

 利益が出ない原因はまだある。オープン化すると各社の製品を組み合わせてシステムを開発しなければならない。極端な例は、その製品ごとに技術者が必要になる。これが人件費を押し上げる。またソフトウエアのバージョンアップも、メインフレームよりも頻繁だ。このコストもばかにならない。

 「要するに、この飛行機はエンジン出力が小さく、それに加えて機体が重い。だから離陸できないのだ」

 飛行機マニアの金山は自分の会社をこうなぞらえた。金山は座っている席を180度回転させた。蒲田にあるオフィスからは羽田空港から飛び立ったボーイング747-400D型機が、ゆったりと上昇していく姿が見えた。