PR

文:瀧口 樹良(札幌総合情報センター 主任研究員)

 【前編】では、ネットアンケート調査の結果を手掛かりに、共通番号(国民ID)制度の導入や行政による個人情報の活用について、住民がどのように考えているかについて探ってきた。その結果、共通番号に対する賛否は賛成が半数を占め、行政が個人情報を活用すること自体に対しては、リスク以上にメリットを感じていることが明らかとなった。

 一方で、依然として4割近くが「共通番号」の導入に反対であり、その理由の多くが目的外の利用や第三者に情報が漏洩することなど、行政自身の個人情報の活用に対する不安や懸念が挙がった。【後編】では、こうした住民の意見の背景を分析する。

情報漏えいや目的外利用を不安視

 まず「行政による個人情報の活用に対する不安」について、直接的に尋ねてみたところ、「不安がある」と「どちらかといえば不安がある」が合わせて79.1%だった(図5)。つまりメリットを感じつつも、不安かどうかを尋ねられると、不安であるとの気持ちが圧倒的に勝っているようだ。

図5●行政による個人情報の活用に対する不安(有効回答:1200)
図5●行政による個人情報の活用に対する不安
(有効回答:1200)

 2010年9月に発表された東京大学と東洋大学およびNTTが共同で行った世界10カ国を対象とした国際比較電話調査によると、日本人は他国よりもネット利用に不安を抱く傾向があり、セキュリティ対策などの技術的な「安全」が確保されていても、利用時に「不安」を感じるという結果が出ている。このため、技術的に解決可能な客観的な「安全」だけでは、主観的な「安心」が得られないという「安心と安全の乖離」が生じていると指摘している。今回の調査結果で「不安と感じる」との回答が圧倒的に多かったことも、こうした「安心と安全の乖離」が生じているとも考えられる。

 そこで、先の「不安がある」または「どちらかといえば不安がある」と答えた回答者に対して、「不安に感じる理由」を尋ねた。その結果、「第三者に渡るなど、個人情報が漏洩する恐れがあるから」が83.5%、「本人に同意なく、個人情報が利用目的を超えて利用される恐れがあるから」が79.6%、「行政が情報をどのように利用するか信頼できず、不安だから」が58.9%、「盗み見られるなど、知られたくない個人情報が他人に知られるようになるから」が58.8%という順番だった(図6)。本人の知らないところで、個人情報が行政に勝手に使われてしまうのではないかとの懸念が根底にあると考えられる。

図6●行政サービスでの個人情報の活用に不安を感じる理由(有効回答:949、複数回答)
図6●行政サービスでの個人情報の活用に不安を感じる理由
(有効回答:949、複数回答)