委託する作業を標準化してばらつきを減らす

 クラウドソーシングの際に、不特定多数の業務品質をどうスクリーニングするべきだろうか。サイバーエージェント子会社で、中古ブランド衣料品のオークションを手がけるクラウンジュエル(東京都港区)の事例が参考になる。

 同社は顧客から買い取った衣料品をウェブサイトに出品し、別の顧客に転売する。商品の出品時に必要になるのが、衣料品の写真を撮影して画像を加工する作業だ。画像の点数は月間で万単位にもなり、膨大な作業時間を要する。2009年3月から、ポイントサービスなどを手がけるリアルワールド(東京都渋谷区)のネット会員に加工作業を委託した。

 作業を請け負う会員は、画像加工のスキルを持たない一般の主婦などが大半。品質のばらつきを無くすため、リアルワールドは独自開発した画像加工ツールを会員に提供する。ツールの指示通りに操作すると、明るさの調整など、クラウンジュエルが定めた標準作業を一通りこなせる。

 クラウンジュエルは納品された画像を人間の目でチェックする。同社の宮澤高浩商品管理局マネージャーは「当初は画像にゴミ(ノイズなど)が残っていることが多いなど品質に不満を感じたが、今は安定してきた」と評価する。5月7日から、作業を委託する点数を、従来の倍の1日当たり1000点に増やした。コストは従来よりも約3割下がる見通しだ。

 今後は品質チェックの作業にもクラウドソーシングを活用したい考え。チェック項目を作成しておき、1点の画像を多人数でチェックすることで精度を高める。宮澤マネージャーは「クラウドの作業で99.5%の精度を確保できるようなら、社内で2重に実施しているチェック作業を1回に減らす」と語る。

効果の高いバナーをネットで自動判定

 スクリーニングを自動化する仕組みを構築し、作業負荷を一掃したのはリクルートである。同社は2008年8月から、クリック率の高いバナー広告を作成するサービス「みんなのクリエイティブエージェンシーC-TEAM」を運営。ウェブサイトを通じてバナーの作成を依頼している()。

図●クラウドソーシングで集めた画像のうち効果が高いものだけを抽出する仕組みを構築したリクルート(写真撮影:陶山 勉)
図●クラウドソーシングで集めた画像のうち効果が高いものだけを抽出する仕組みを構築したリクルート
(写真撮影:陶山 勉)
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 同サイトに登録したクリエーターがバナーを1個作るごとに500円相当のポイントを支払う。2009年4月時点で、クリエーターの人数は8000人以上。完成したバナーは2万点を超える。同社メディアテクノロジーラボの須藤憲司ビジネスプランナーは「広告案件が追いつかない」とうれしい悲鳴を上げる。

 バナーが多数集まると、効果が低いものをスクリーニングする作業が難航しそうだが、リクルートは自動化することで解決した。具体的には、NTTレゾナント(東京都港区)のポータル・サイト「goo(グー)」に複数のバナーを無作為に表示させ、クリック率の高さを短時間で自動判定。クリック率が高いバナーを抽出するノウハウを確立した。

 抽出したバナーを様々なウェブサイトで集中的に露出させ、クリック率が事前に設定した基準値を下回ってきたら、別のバナーに自動的に入れ替える。このように自動的に画像を選別する仕組みにより、C-TEAMを利用する以前と比べ、クリック率が平均2倍以上になる改善効果を出している。

 クリック率が高いバナーを自動判定するアルゴリズムと、効果が低下したバナーを入れ替えるロジックの組み合わせは米国の数学者と共同で研究して作り上げた。特許を申請中である。

 C-TEAMはクリエーターが自発的にPDCA(計画・実行・検証・見直し)サイクルを回す仕掛けも用意する。クリック率が高いバナーにボーナス・ポイントを提供し、専用サイトで紹介することで、「クリエーターたちが検証してくれる」(須藤氏)。例えば住宅情報サイト「スマッチ!」のバナーのクリック率はさらに向上し、2008年8月の平均1.79倍(C-TEAM利用前比)から同年9月には同2.54倍となった。

 リクルートは現在、交流サイト「mixi(ミクシィ)」を運営するミクシィなどと協業し、サイトの広告枠とC-TEAMを組み合わせた「通常よりも高い効果が期待できる広告枠」を販売するなどのビジネスモデルを展開している。これまでにソニー生命保険(東京都港区)や三井不動産レジデンシャル(東京・中央)などがC-TEAMを採用した。須藤氏は「既にそれなりの費用を投じていて、費用対効果を改善したいと考える企業から好評だ」としている。