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 日本には約2300兆円の不動産がある。土地や建物などの不動産は分散して立地しており、情報のタイムリーな集約が困難で、効果的なマネジメントが難しい業務領域だった。ここにビジネスチャンスを見いだした清水建設の板谷 敏正氏は、社内ベンチャー制度を利用して「@プロパティ」を提供するASP専業会社プロパティデータバンクを設立した。(ITpro編集部)

画面●@プロパティ
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 創業時、最も苦心したのはASPシステムの構築です。基本設計は、創業パートナーである副社長が中心となって作成しました。頭を悩ませたのは、「@プロパティ」(画面)のアーキテクチャとしてマルチテナント方式を貫くかどうかという点です。今でこそ一つのシステムを複数の企業で共有するマルチテナント方式のASPはいくつか登場していますが、創業時の2000年前後には国内でWebをインタフェースとする業務用のアプリケーション自体が多くありませんでした。米国のSalesforce.comが日本で事業展開を始めたばかりという状況で、参考にすべきBtoBのサービスは見当たらず、商用に耐える要件を手探りで模索していたのです。

 当初は、顧客ごとにハードウエアを用意する方法や、仮想端末ソフトウエアを使ってシンクライアントを構成する方法も検討はしました。しかし、それらの方法を取るなら、わざわざ社内ベンチャーとして創業した意味がありません。複数の企業でシステムを共有利用するマルチテナントこそが顧客にも自社の経営にも資する部分が大きいと判断し、非常に難しい選択ではありましたが、マルチテナントで複数の不動産オーナーがセキュリティを保持しながら共有できるシステムの構築を目指しました。それにこだわったのは、主に以下のような理由によります。

 ・マルチテナントであれば、利用料に立脚したストックビジネスが可能である
 ・近い将来損益分岐点を超えれば必ず大幅な利益を獲得できる
 ・顧客ごとに構築するフローのビジネスでは効率が上がらない
 ・マルチテナントのASPシステムの開発と運用こそが新会社のコアコンピタンスであり自らが構築し獲得すべきノウハウである
 ・ビルオーナー、投資家、管理会社など複数企業が安心して使えるサービスは業界のインフラとなる

 副社長と開発ベンダーが協力し、一つのシステムで複数の顧客の利用に耐え得るデータ構造について研究を重ねました。開発開始から約半年経った2000年年末頃、これを実装することに成功しました。業務要件を満たす機能はもちろん、セキュリティ、信頼性、アクセス制御、料金計量、システム運用など、ASPとして要求される水準を満たすために試行錯誤を繰り返しました。