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 「システム開発プロジェクトのスタートはどこから?」という疑問を持つことはないだろうか。顧客から引き合いがあった時という人もいれば、落札した時点という人もいる。どのような場合であれ、プロジェクトがスタートして最初に策定するのはプロジェクト計画である。そしてこのプロジェクト計画策定に当たり最初に作成される成果物がプロジェクト計画書である。

 プロジェクト計画書は、会社によってはひな型が準備されており、これに従って必要な項目を記入するだけで出来上がるケースは少なくない。このようなケースだと、経験の浅いPM(プロジェクトマネジャー)であっても準備されたひな型の空欄を埋めるだけで立派なプロジェクト計画書が書けてしまう。

 このため、プロジェクト計画策定に要する時間は短く、その次のフェーズである要件定義に掛ける時間を長く取っているPMは少なくない。そういうPMは「途中で必ず変更が入るので、計画に時間を掛ける意味がない」「PMBOKでも推奨されている」と主張する。PMBOKにローリング・ウェーブ計画法(注1)があるとはいえ、プロジェクト計画自体を軽んじてよいということではない。これを取り違えてしまうと、後々取り返しの付かない状態になる。

(注1)ローリング・ウェーブ計画法(Rolling Wave Planning):
 PMBOK第6章「タイムマネジメント」のツールと技法に紹介されている計画技法。短期的に完了しなければならない作業は詳細に計画し、遠い将来の作業はWBSの上位レベルで計画し、それ以上詳細化しない方法。プロジェクトの開始時点ではWBS作成上必要な情報が不足していたり曖昧であったりするために、全ての作業をワークパッケージレベルに分解できない。そこで、比較的情報量の多い直近の仕事のみをワークパッケージとして定義し、先の仕事についてはプロジェクトの進行状況に合わせて詳細化する。

プロジェクト計画を軽視したKさんのケース

 Kさんは入社3年目で、大学時代は情報工学を専攻していたこともありプログラミングには自信があった。Kさんの勤める会社は小さいながらも独立系のシステムインテグレータで、このたび50人月程度の人事系システムのリプレース案件を受注した。Kさんの会社は慢性的な要員不足だったので、このリプレース案件のPMとしてKさんが抜擢されることになった。

 SEとしての経験もそこそこに、突然PMを任されることになったKさん。多少の不安はあったが、「これで一気にキャリアアップできる」と持ち前の楽天的な性格で今回のPM就任を前向きに捉えていた。

 何から手を付けたらよいか分からないKさんは、まずは協力企業の中堅技術者に相談してみた。するとその技術者は「まずはプロジェクト計画ですね」とアドバイスをくれた。やることが分かれば即実践あるのみである。早速Kさんは書店に行ってプロジェクトの上流工程を解説した書籍を買い求めた。また、別の技術者のアドバイスを受けPMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系)の日本語版も入手した。

 プロジェクト計画を策定しようといろいろと書籍を読んでいるうちに、ある書籍にプロジェクト計画書のサンプルが載っていた。「これはしめた!」とばかりにKさんは、その書籍にあったサンプルを参考にプロジェクト計画書を一気に書き上げ、翌朝には上司にレビューをお願いしたのであった。

 Kさんの上司は、初めて書いたプロジェクト計画書の割には項目が整っていることに感心した。そのため、内容そのものよりはむしろKさんの急速な成長を喜び、一発でOKとしたのだった。

 その後、プロジェクトは要件定義を経て設計へと進んだ。もともと実装を得意とするKさんは、設計フェーズ以降は本領発揮とばかり、八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍であった。そしてこの頃には、当初作成したプロジェクト計画書のことなどすっかり忘れていたのである。Kさんはその場その場で判断を行い、要員のアサイン替えやスケジュール変更、バグ対策などを手際よく指示していった。

 その甲斐あってプロジェクトは順調に進むかに見えた矢先のことである。製造フェーズもそろそろ終わり、結合テストに入ろうかという時に問題が判明した。あるサブシステムでモジュールレベルの実装漏れが判明したのである。そのサブシステムはプロジェクト計画時点ではAチームが担当となっていたが、その後のKさんの指示によりAチームのほとんどのメンバーは(実装が遅れ気味だった)Cチームの応援に入っていた。Aチームのメンバーを戻そうにも、そうするとCチームが遅れてしまう。だからといって、別のチームを当てようにも分業化しているため仕様が分からない。

 Kさんは悩んだ揚げ句、Aチームのメンバーを戻し、Cチームの応援にはBチームから要員を新たに割いて対応することにした。しかし、このため順調だったBチームの作業にまで遅延が発生してしまったのである。結局これが原因でスケジュール遅延となってしまった。