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 今回の大災害で犠牲となられた皆様に深く哀悼の意を捧げる共に被害者の皆様にお見舞いを申し上げます。この短い記事で、今回の震災に対する米国の反応を、ITと電力とエネルギーの観点から見てみたい。最初に、多くのアメリカ人の友人や仕事仲間からお悔やみの言葉を掛けられたことを述べておきたい。日本は決して見捨てられていない、必ず復興すると信じている。

 1995年の阪神大震災のときは日本からの情報が実時間で入ることはなく、大阪出身の筆者としては歯がゆいものがあった。2011年の今、ICTが格段に発展して、こちらでもNHKの放送を実時間でネットを介して見ることができる。CNNその他のニュース系Webサイトでは、NHKの英語放送を絶え間なく同時放送している。大地震と津波の被害だけではここまで放送しないのではないか。やはり焦点は原発事故の行方だ。

 周知のように、米国では日本同様、原子力発電が電力供給のベースとなっている。原子力で一定量の発電を行い、火力発電で需要と供給のバランスをとるというものだ。カリフォルニア州では州内に3カ所の原発があり、稼働している。日本全体がカリフォルニア州にすっぽり入るくらいの大きさであることを考えれば、日本の原発の密度(17カ所稼働中)は高い。世界の他の地域と同様、現在米国では、稼働中の原発を停止するのかそのまま運用するのかの議論が盛んになっている。

 米国でかなりの発電量を提供する原発を停止すれば、現在東京を含む東日本で行われているのと同じ計画停電が必要となる。カリフォルニア州では2000~2001年にかけて計画停電を経験している。今、改めてそれを実施するとなるとどれだけの人が賛成するか疑問だ。妥協点は、原発を計画的に停止して個々の耐震性を検査することかもしれない。しかしどのレベルまでの地震を想定するのだろうか。悩ましい問題である。

 再生可能エネルギーはまだまだ今後の改良が必要で、現時点では原子力発電に置き換わるまでに至っていない。しかし原子力に代わるエネルギー源として太陽光発電への期待が高まり、関連分野の株が上昇している。このまま太陽光発電への投資が拡大してこの分野が大いに進歩するという見方がある半面、太陽光発電の大きな市場である日本が復興に力を注ぐため市場が冷え込み、全体としては市場の発展が減速すると見る向きもある。

 ICTに対する影響も出てきている。まずチップなどの部品の輸入が日本から止まっているため、製品の生産を中止、または減産するところも出始めている。こういった報道を見るとICT製品に日本製が数多く使用されていることを実感し日本の底力を感じる。日本製の基本チップや部品の輸入停止はICT業界に限らず家電や自動車業界にも影響を与えていることを付け加えておく。

 さらに、ここで起こりうる大地震への備えについて、見直しが始まっている。筆者の住むシリコンバレーでは主要都市はすべて断層に近く、いつ大地震が起きても不思議ではないため、東京同様大きな不安を抱えている。1989年以来大きな地震はないが、明日起こっても不思議ではないのだ。Google、Oracle、Hewlett-Packard、IntelなどICT関連のハイテク企業大手の本社があり、ここで大地震が起こればICT業界に与える影響は非常に大きい。

 最後に福島原発の問題がこれ以上大きくならないことを願って筆を置く。

岸本 善一(きしもと ぜんいち)
米IP Devices代表
 京都大学電気工学科を卒業後,米国でコンピュータ・サイエンスの博士号を取得。GTE研究所,Hewlett-Packard,北米NECを経て 1998年にIP Devices社を設立。先端技術をビジネス展開に結びつけるコンサルティング業務を提供する一方,NASAの技術を商品化する Intellimotion Systems社のCOO/CTO,オープンソースの負荷分散・ハイアベイラビリティに重点を置いたInternet Appliance社のCTO,小型モバイル組込みシステムのセキュリティを提供するCardSoft社のVP Strategic Alliancesを務めるなど,ベンチャー企業での技術とビジネスの融合にも力を注いでいる。米国のオープンソース企業,MySQLやJBossの日本市場参入も手がけ,最近は米国AltaTerra社と協業でスマートグリッドやグリーンITの市場調査を行っている。