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ビジネスブレイン太田昭和
会計システム研究所 所長
中澤 進

 未曾有の被害をもたらした東日本大震災、加えての原発問題、若干レベルが異なるが計画停電に伴う各種混乱---。今回の震災は明治維新や第二次世界大戦の敗戦に匹敵する出来事であるかもしれない。その影響は現時点に限らず、今後とも計り知れないものがあるに違いない。被災された方々には心からお見舞い申し上げる。

 一連の出来事で筆者が強く感じたのは、情報発信および入手の難しさと、そこから発生する情報格差の大きさである。この情報格差の問題は、経済学の世界において「情報の非対称性」として議論されている問題とほぼ同じであると考えてよい。

 グローバル化された証券市場でも、情報の非対称の問題が見られる。IFRS(国際会計基準)は、証券市場において情報の非対称性を最小化する重要な道具である。今回と次回で、震災が顕わにした情報の非対称性について見ていくことにする。

情報洪水が格差を広げる

 筆者自身は、震災に関するものを含め情報を入手する手段として、Twitterを中心に、各種Webサイト、テレビ、新聞、加えてfacebookを若干利用している。その中で氾濫する情報に溺れかけている自分に気付く。

 種々の媒体が発信する情報は極めて多様であり、かつ混沌としている。事実そのものの情報や海外から発信されたものもあれば、発信者のバイアスがかかったもの、メディアビジネスとしてのもの、デマと思しきものも多く見受けられる。

 考えるに、今回の大災害は日本社会における情報伝達・入手の手段が変化する真っ只中で発生したのではないだろうか。特に、インターネット経由の情報はそのスピード、量とも他の媒体を凌駕している。このため、個人の持つインターネットリテラシーの有無あるいは高低により、情報格差は極めて大きいものとなっていると感じる。

 しかも、インターネットなどを通じて多くの情報を獲得したとしても、それらはあくまでもデジタル化された量的情報すなわち形式知である。質的情報すなわち暗黙知は一部の専門家のみに集積されていく傾向が強く、多くの一般市民が容易に入手できるものではない。

 つまり各個人にとっては、経済活動の複雑化に伴う専門性の細分化とインターネットなどによる情報量の膨大な増加は、かえって情報の獲得・解釈を困難にする世界を形成しているようにも見える。

 その結果、そもそも多くの情報を入手できない人たちや、情報を獲得できてもその内容を解釈できるだけのリテラシーを持たない人たちは、各人の許容量をはるかに超えて日々発信される情報に対する信憑性を判断できないまま、フラストレーションをためていき、不安感や不信感を高じていくことになる。