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 2011年3月8日、ITベンダーのインフォテリアはスマートフォン/タブレット向けコンテンツ配信サービスの新版「Handbook 3」のリリースを発表した。Handbook Studioというオーサリングツールでコンテンツを作成・配信し、スマートフォン/タブレットにインストールしたHandbookアプリ上でそれを閲覧できるというSaaSである。このHandbook Studioを利用するには、PC上でFirefox、Google Chrome、Safariのいずれかのブラウザーを使う必要がある。Internet Explorer(IE)が対応ブラウザーから外されているからである。

 同社がIEを外した理由は、Handbook Studioの高度な操作性にある。Handbook Studioでは、ドラッグ&ドロップによるファイルの一括アップロードなどの機能をHTML5を駆使して実現している。IE8が製品としてはIEの最新版だった3月8日の時点では、IEのサポートはあり得なかった。HTML5対応をうたうIE9についても、「そのまま動くかどうかは分からない。動作させるには調整が必要」という。

 Handbookは企業での利用を想定した業務アプリケーション。以前であれば、IEで使えないなどという選択肢は考えにくかっただろう。ブラウザーが大きく変わる中、このような選択が現実味を帯びてきた。とりわけ次世代のWeb技術を駆使したシステムの開発を考える開発者には、ターゲットブラウザーの見直しが求められる。

 ターゲットブラウザーを考えるには、いろいろな観点があり得る。ここでは大きく三つの考え方を挙げたい。(1)シェア重視、(2)スマートフォン重視、(3)全部乗せである。

■シェア重視
 IE9がリリースされた後も、IE6/7/8が占めるシェアはしばらく高いまま続く。現在でも利用比率が高いWindows XPにIE9をインストールすることができない上、IEユーザーは新バージョンが出ても旧バージョンを使い続ける傾向が強いためだ。

 そこで、シェアの高い旧バージョンを含むIEをメインのブラウザーとして位置づけ続け、必要に応じてFirefoxを加える――。これが一つ目の考え方だ。要は現状維持だが、マジョリティーにアクセスできるというメリットは捨てがたい。デメリットは新世代のWeb技術を駆使できないことである。

■スマートフォン重視
 考え方の二つ目はスマートフォン/タブレットを重視するというもの。具体的には、Google Chrome、Safariがメインとなる。Google ChromeとSafariはレンダリングエンジンとして同じWebkitを使っているため挙動が似ており、相性が良い。Windows Phoneの動向次第で、IE9も選択肢に加わるだろう。

 これのメリットはメリットは新技術、新市場をいち早く取り込めることである。デメリットは多くのユーザーを切り捨てることだ。

■全部乗せ
 すべてのブラウザーに最適なユーザーインタフェースと機能を作り込むというのが、三つ目の考え方である。先進的なブラウザー上では機能や操作性を盛り込み、レガシーなブラウザー上では地味なWebサイトとして表示する。この考え方を「プログレッシブエンハンスメント」と呼ぶ。

 メリットはすべてのユーザーに最適なUIと機能を提供できること。運用保守の工数がかかるのがデメリットである。

どんなに遅れても2014年

 二つ目と三つ目の考え方は、HTML5の採用が前提となる。HTML5については「時期尚早」「今からでも始めるべき」など、様々な意見がある。一つ確実に言えるのは、HTML5の議論は「来るか来ないか」ではない。来ることは確実であり、「いつ来るか」が問題となる点である。

 その時期は、どんなに遅れても2014年より後になることはない。この年の4月にWindows XPおよびIE6のサポートが終了し、旧世代のプラットフォームが一掃されるからだ。また、同じ年の第2四半期にはW3C(World Wide Web Consortium)による勧告がなされる見込みで、HTML5が最終的な仕様として固まることになっている。

 それまでの期間をどう過ごすか。どういうWebシステムを開発し、運用するのか。その選択が今問われている。