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 業界特化型のクラウドサービスを提供している「いい生活」。クラウドサービス提供ノウハウの蓄積のため生活情報全般を扱うWebサイトの運営からスタートし、早々に不動産業界特化型のクラウドサービスを提供していく。今では売上高のストック要素が9割を超えているが、その過程には、カスタマイズからの脱却やパフォーマンスチューニング、販売メニューの複雑化など多くの乗り越えるべき課題があった。(ITpro編集部)

画面●不動産業界特化型クラウドサービス
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 会社の設立は2000年、不動産の情報は紙で管理されることが一般的でした。インターネットの利用が一般化してきているのだから、不動産情報をインターネットに乗せて提供できるようになれば、もっと業務の効率化が図れて、大勢の人にとって便利になるのではないかと考えたのが会社設立のきっかけです。また、不動産業は産業別GDP構成比で14.7%(平成21年度版国民経済計算)を占める国内最大規模の業界であったことも要因の一つです。

 そのため、システムを顧客へ提供する前に、不動産業界に必要と考えられるコンテンツの表示方法、検索の仕組み、複数コンテンツが混在するインターネット空間における消費者の興味と行動をチェックし、最終的に不動産業界に提供するシステムの仕様確定とノウハウ蓄積を目的とした試験サイトを公開しました。調査と試験の目標を達成するために、消費者が購入前の情報収集を熱心かつ慎重に行うであろう金額の高い商品とサービスを不動産情報に加え、試験サイトには衣食住の他、冠婚葬祭のコンテンツを並べました。ノウハウの蓄積後、早々に不動産業界に特化したシステムの開発と同時に営業を開始しました(画面)。

 営業先に対し、初めて経験するインターネットで物件がどのように見られるのかなど不動産情報の活用例を説明する際に、試験サイトはショーケースとして良い例であったため、営業ツールとして運用を続けながら、不動産業界向けにASPの形態としてシステム提供するために開発に社内リソースを集中させました。当時から我々は不動産会社も自社でホームページと物件や大家、入居者のデータベースを持つことの重要性を訴えていたものの、当時不動産会社は自社の管理物件を複数のネット上の媒体(不動産物件の検索サイト)に出稿することがインターネットで入居者や購入者を募集する方法であると考えていました。従って、不動産会社の従業員は複数の不動産ポータルサイトに同じ物件情報をポータルサイトの数だけ何度も手打ちで入力、更新する作業に忙殺されていました。

 ポータルサイトの入力画面の入力項目数も入力の順番もポータルサイトごとに違い、手間とミスが発生していました。そこで、我々のシステムに登録しておけば、ボタン一つで複数の媒体に出稿できるサービスを提供し始めました。

 その後、すべての不動産顧客のニーズに応える拡販用クラウドサービス(当時はASP型と呼ばれていた)の提供を目標とし、今日までに順次実現させてきました。ただ、当時は資金や開発工数の問題から個別顧客の受託開発を数多く行い、それらを拡販用クラウドサービスの開発と提供に生かすという時期でした。個別顧客の受託開発の受注に依存する状態からの脱却が数年前までの課題でした。

専用開発依存から脱却

 ADSLや光回線の普及、Webブラウザーのリッチ化に後押しされ、クラウドサービスが採用されるペースは徐々に上がってきました。ストック比率が5割を超えたのは、2006年3月期のことです。また、2006年3月に305社だった契約者数は12月に750社になりました。このように売上内訳、顧客数の伸びを見ると順調ですが、専用開発に慣れ切っていた社内体質を変えるのには時間がかかりました。

 まず営業スタイルです。専用開発の場合、“御用聞き営業”が許されやすいので、これをクラウドサービスの営業活動で行われると、専用カスタマイズをするべきかという議論を何度も行うことになってしまいます。これが拡販用クラウドサービスの開発を遅らせる要因にもなりました。

 次期拡販クラウド型開発に生かすための要望を集約する仕組みを作ってはいましたが、個別顧客の要望対応へ偏りがちであったため、この状況を改善していくために、「不動産業界におけるベストプラクティスをシステムでサポートすることが拡販用クラウドサービスの浸透への近道であり、導入顧客の継続的発展に寄与する最も効率的なIT投資につながる」と繰り返し社員同士で確認し合いました。

 次に開発スタイルです。専用開発に慣れ切ってしまった開発者は顧客の要望待ちとなるケースが多く、世の中のトレンドの変化に鈍感になってしまう傾向があります。例えば、「今時こんな画面デザインは古い」という感覚が弱い、これまで1社がOKといえば許されていたため自己満足なシステム設計に陥りやすいといった具合です。

 過去案件へのこだわりが強いエンジニアには非常に大変な変化が要求されたわけです。それだけに時間がかかりましたが、営業担当者やサポートセンター経由で顧客の声を共有する、他社サイトを評価するなどの取り組みを行うことで何年もかけて徐々に改善させてきました。