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 日立情報システムズは、ミドルウエアサービス「App Bridge」を展開中だ。事業展開に当たっては、同社のEDIサービス「EDIWorks」をオープン化するときに苦労した経験と、そこで培ったノウハウを生かしている。その肝は「撤退戦術」と「成功戦術」を考えておくことだという。(ITpro編集部)

 クラウドビジネスの立ち上げには「撤退戦術」の議論が欠かせません。これは事業立ち上げ時に撤退条件などを定め、事業が顧客に受け入れられないとき、速やかに撤退するための準備です。日本人には「事業撤退=恥」という感覚があり、受け入れ難い話かもしれません。しかし、クラウドビジネスはリスクを伴う事業であり、競争相手も多く高い成功確率を望めないという現実を考えたとき、傷を大きくしないためにも必要な戦術と言えるでしょう。

 撤退戦術と同様に重要なのが「成功戦術」です。これは「成功したときの戦術」ではなく、「成功しそうになったときの戦術」です。クラウドビジネスの成功局面では、顧客が急増します。ここで申し込みを停滞させず、アプリケーションを安定稼働させることが、クラウドビジネス成功の絶対条件です。クラウドビジネスの立ち上げ時は、ランニングコストを抑えるため、システム構成は必要最低限になっているのが一般的です。成功戦術とは、クラウドビジネスの成功局面において、最小化されているシステム構成を適切に増強し、ビジネスを停滞させることなく、アプリケーションを安定稼働させるための戦術です。

 撤退戦術は経営判断です。事業の将来を考え、投資するか、撤退するかを決断します。成功戦術も経営判断ですが、撤退戦術とは異なり、技術的な要素が大きく影響します。つまり、クラウドビジネスを支えるアプリケーションにはサーバー増強などによって処理能力を向上させるスケーラビリティーが必要であり、成功戦術はアプリケーションのスケーラビリティーを前提とした経営判断なのです。

 クラウドビジネスでは、ユーザー数やデータ量に制限を付けることができません。このためアプリケーションには、今まで以上にスケーラビリティーに対する耐性が求められます。これがアプリケーションデザインから見たクラウドビジネスの特徴であり、難しさです。高いスケーラビリティーを実現するためには、アプリケーションの概要設計からスケーラビリティーを意識しておく必要があります。日立情報システムズの事例をたどりながら、我々がスケーラビリティーとどのように向き合い、解決したかを紹介します。

EDIWorksが抱えていた問題

 「EDIWorks」は、日立情報システムズが提供しているEDI(電子データ交換)サービスです。2011年2月時点で、8500社を超える企業を接続し、月間8300万件の取引を処理する規模に至っています。EDIWorksは1980年代に構築されたメインフレームベースのVANサービスを源流とし、2004年にオープン系システムに切り替えました。切り替え時点の設計は、メインフレーム時代の設計を色濃く残し、大型UNIXで構成された一極集中のシステム構成となっていました。大型UNIXに移行したEDIシステムは順調に稼働しましたが、2005年に大きな問題に直面します。

 オープン系への移行に伴い、全銀Basic、JCAを中心とした旧来のEDIサービスに加え、TCP/IPベース手順(全銀TCP、FTPなど)に対応することになりました。さらに新たな通信手段としてWeb、電子メール、FAXなどの付加サービスを次々リリースしました。その結果、処理件数は増加する一方となったのです。しかし、大型UNIXの処理能力には限界が生じつつあり、大幅な処理量増加は見込めません。ビジネスを成功させるために、一極集中のアプリケーションデザインを見直し、スケーラビリティーを確保する必要に迫られました。

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