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 日本ケーブルラボは、放送・通信連携による次世代セットトップ・ボックス(STB)の技術仕様書を作成し標準化したと発表した。2011年秋に試作機による実証実験を行い、2012年にはケーブルテレビ事業者各社が次世代STBを導入して商用サービスを提供できるようにする計画である。

 次世代STBの標準仕様では、RF入力から映像音声出力に必要な機能に加えて、IPインタラクティブサービス提供のための技術仕様を規定した。必須項目は、通信インタフェースではDOCSIS2.0(IPv6対応は必須)、イーサネットは100BASE-TX、無線LAN はIEEE802.11a/b/g/nである。無線LANについては、STB単体ですべての規格に対応できなくても、外付けの無線ルーターを接続してIEEE802.11a/b/g/nに対応できるのであれば条件を満たすものとする。

 変調方式は256値QAM、映像符号化方式はMPEG-2とH.264を必須項目とした。搭載するCPUの能力は2000MIPSである。HDDレコーダー機能も必須項目とする。短期間でHDDに搭載できる記憶容量は増えることから、内蔵よりも外付け対応を推奨する。グラフィックスでは、3Dコンピューターグラフィックス用APIであるOpenGL2.0対応を必須とする。このほかに、外部機器接続インタフェース(USB2.0)に関するハードウエア、ソフトウエア、APIについての技術仕様も策定した。

 現行のSTBでは、メーカーごとに機能など詳細仕様が異なっている。次世代STBでは、ハードウエアの仕様などはケーブルテレビ事業者共通の統一仕様とし、すべてのヘッドエンド設備との互換性を保持する。その上でケーブルテレビ事業者各社が要望する個々のサービスは、Linux上で動作するAndroidアプリで実現する。

様々なアプリの登場に期待

 ケーブルテレビ事業者各社は、自分たちに必要なアプリを選択して搭載できる。日本ケーブルラボは、様々なAndroidアプリがボトムアップで提供されることを期待しており、アプリの認定体制の構築も商用化までに検討する方針である。

 このほかの次世代STBの特徴として六つを挙げた。具体的には、「無線LANルーター機能によるスマートフォンやタブレット端末などによるケーブル回線を利用したデータサービスの提供が可能」「DLNAサポートによるSTBとデジタル家電の相互接続ができる」「DOCSIS3.0サポートによる通信回線の速度増加とIPv6サポートの実現」「ポータル機能対応によるインターネットテレビを含めた分かりやすい番組表示と高速検索が可能」「テレビ電話対応による医療、安心安全などのホームICTサービスの提供を実現」である。日本ケーブルラボは、今回の次世代STBの技術仕様の国際標準化を目指す。

 この技術仕様は、日本ケーブルラボの第17回運営委員会(2011年4月6日開催)で承認された。同日行われた会見で、専務理事の松本修一氏は「ケーブルテレビ事業者のほうでカスタマイズができる。各ケーブルテレビ事業者が地域にニーズに相応しいアプリを搭載することで、同じ業態でも様々なことができる」と説明、次世代STBの利点としてハードウエア仕様を統一しながら、ソフトウエアでオープンな仕様を採用することで各地域のニーズに対応した機能を搭載できる点を挙げた。

ケーブルテレビ事業者は1万円以下を想定

 次世代STBの価格については、「ケーブルテレビ事業者から1万円以下にしてほしいという要求が出ている」(松本氏)という。なおメーカーの反応については、「製造するかどうかはまだ決まっていないが、5社ぐらいが関心を示している」(松本氏)とした。

 このほかに日本ケーブルラボは今回の会見で、デジタルホームネットワークプロトコルであるDLNAを活用したSTBとデジタル家電との接続のための運用仕様書の策定完了を報告した。この仕様に基づいて開発された機器の相互接続性確認のための実証実験を2011年4月中旬に実施する。その妥当性を確認したうえで、5月に正式な標準規格とする。なお次世代STBの技術仕様書はこのDLNA運用仕様書に基づいており、DLNAによる接続をサポートする。

スタートラインに立った

 今回の標準仕様策定で、放送・通信連携時代に向けて、ケーブルテレビ業界が生き残るための基盤ができた。ただし、仕様策定はあくまでスタートラインに立ったことを意味し、本当の勝負はこれからだ。

 例えば、メーカーの立場に立つと、ハードの値段は数で決まる。業界が足並みを揃えることで、1万円以下という数字が視野に入ってくる。仕様策定には、KDDIと業界の主要なケーブルテレビ局が入っているが、今後さらに多くの事業者の賛同を得ることで、その効果はより大きくなる。ソフトを開発する側も、一般にハードウエアの普及規模に応じて開発リソースを投入する。オープンなソフト基盤を採用した効果を最大限に発揮し、このSTB上で動くアプリを充実される上でも数が重要となろう。

 その一方で、利用者の立場に立つと、「オープンな環境」が必ずしも利用しやすいわけではない。米AppleのiPhoneが使いやすいのは、垂直統合型のいわゆる「ウオールドガーデン」型でサービスを提供しているからと分析される。次世代STBはオープンなソフトウエア環境を採用した中で、周辺機器との連携を含めどういう形でユーザーが使いやすい環境を用意できるのか、が重要になるだろう。

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