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 今回、改まってBA(ビジネスアナリシス)を語るにあたり、大学を卒業して、ユーザー企業の情報システム部に配属された1980年代から、今日までを振り返ってみた。80年代から90年代にかけて、BAという言葉は一般的でなく、IT業界では、業務分析という表現を使っていた。業務分析は、システム開発の上流工程で上級SEが行う作業であった。

 ちなみに、当時の上級SEは今のプロジェクトマネジャー、ビジネスアナリスト、ITアーキテクトの仕事を兼ねた仕事をしていた。上級SEの中でも特に優れたSEをスーパーSEと呼び、憧れると共に、将来はスーパーSEになりたいと思ったものである。

 当時から、中期計画とそれに基づく年度計画の中で、情報システム部門の方針は決められていた。しかも、コンピュータは最新の技術であり、コンピュータによる業務の効率化のニーズが旺盛であったため、目的、要求を突き詰めて考える必要があまりなかった。ほとんどの情報システム開発の目的は、省力化であり、投資対効果を経営者に説明することに、あまり苦労しなかった。

 このような背景から、年度計画で計画された情報システムについて、ビジネスへの貢献、目的を追求するよりも、いきなり業務分析を始めることが普通のプロセスであった。それでも特に問題はなかった。

 現在は企業の競争力強化、グローバル化に貢献するようなIT投資が求められている中で、ビジネス戦略にリンクした目的を明確にすると共に、最新のIT技術をどのように駆使して、目的を達成するかということが必要となっている。

 このような流れは、日本のみならず、世界でも同様であり、ビジネスアナリストを支援するコミュニティーであるカナダのIIBA(International Institute of Business Analysis)がBAの知識体系「BABOK(Business Analyst Body of Knowledge)」を2005年に公開し、2009年には日本語化もされた。

 BABOKでは、ビジネスアナリシスの目的を「ビジネスニーズと目的、または目標に合致するソリューションを定義し、その妥当性を確認すること」と表現している。まさに、ビジネス戦略にリンクした目的・要求、ソリューションを定義して、それに沿った情報システムを作ることに他ならない。

 しかし、言うは易く行なうは難しで、事業部門からのニーズを深く吟味せずに、システム開発中心で仕事をしてきた身で、いきなりビジネスアナリシスを受け入れ、発想とスキルを転換することは、大変難しい。

 ビジネスアナリシスを実践する上で、ポイントとなるビジネスの要求を引き出すことの難しさについて、以下のような現状がある。

(1)変化の激しいビジネス環境の中で、ビジネスについて熟知しているのは、事業部門の担当者であり、情報システム部門のメンバーが要求を引き出すには相当なスキルが必要である。
(2)ビジネスの要求を本気で考え、整理することが、事業部門、情報システム部門の役割だと思っていない。ベンダーに提案を求める。
(3)ビジネスの要求を整理するためのアプローチ方法やプロセスが決まっていないため、検討のために必要な時間を取らない。
(4)情報システムを構想・企画するフェーズでは、目的やスコープが曖昧であるため、適切なメンバーでチームを作り、段取り良く仕事を進めることが難しい。リーダーシップが取れないか、船頭多くして船山に登るになりかねない。
(5)優秀な個人に依存する。優秀な個人がいないプロジェクトでは、ビジネス要求を引き出せない。

能登原 伸二(のとはら しんじ)
アイ・ティ・イノベーション 取締役 兼 専務執行役員
能登原 伸二(のとはら しんじ)
株式会社ジャパンエナジー(現 JX日鉱日石エネルギー株式会社)の情報システム部門において、長年、情報システムの企画、開発、運用までの幅広い業務に携わり、ITによる業務改革、収益向上を支援してきた。現在は、プロジェクト管理標準導入、PMOの運営、及びITプロジェクトにおけるプロジェクト管理支援コンサルティングを幅広く手がける。日経SYSTEMSにおいて「のとはら先生」シリーズを連載し、大好評につき「プロジェクトマネジメント現場マニュアル」を出版。PMP。名古屋工業大学 非常勤講師。