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 「テレビとインターネットの融合」。この“古くて新しい”トレンドを巡る動きが、米国を中心に活発化している。
 今回は、ヤフーの主催で2010年10月5日に開催されたパネル討論会「テレビ向けサービスの現状と未来」(「CEATEC JAPAN2010」の会場で開催した「Yahoo! JAPAN DAY」の1セッション)での議論の後編を紹介する(前編はこちら)。主な議題は、「売れるネット・テレビの将来像」「Google TVに対する見解」「テレビ・メーカーの勝負所」などである。
 パネリストは1.パナソニック AVCネットワークス社 映像ネットワーク事業グループ 企画グループ グループマネージャーの和田 浩史氏、2.東芝 ビジュアルプロダクツ社TV&ネットワーク事業部TV商品企画部参事の松本 健治氏、3.TSUTAYA TV 執行役員COOの渡邊 健氏、4.ヤフー R&D統括本部フロントエンド開発本部EveryWhere開発部の菅泉 尚史氏の4名。司会は、日経エレクトロニクス副編集長の内田 泰が務めた。

司会 テレビとインターネットの融合に向けた取り組みが始まってから早10年以上が経ちましたが、消費者の購買意欲をそそるほど「売れる」ネット・テレビはまだ登場していないと思います。パネリストの皆さんは、売れるネット・テレビの将来像をどのように描いていますか。また、新しいタイプのネット・テレビである「Google TV」をどのように見ていますか。

パネル討論会の様子
パネル討論会の様子
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和田 テレビとパソコンでは使い方が違います。もちろん、ケータイとも違う。最近では、マルチスクリーンで、例えばテレビを見ながらノート・パソコンを使い、電話が着たらケータイを使うのが普通になってきている。だからと言って、パソコンの機能そのものをテレビに入れたらいいのかというとそうではなく、テレビならではのスクリーンや使い方が必要になってくると思います。やはり、テレビに向けたサービスをどう追及するかが重要と考えています。

松本 インターネットはあくまでユーザーがやりたいツールのひとつ。ユーザーはまず、きれいな映像をテレビで見たいと考えていると思います。だから、画質は重要です。そして、コンテンツの楽しみ方の自由度を高めることも大事です。東芝では、HDDへの番組の録画から始まって、NASへの録画を可能にしたり、最近ではTSUTAYA TVやヤフーの動画配信サービスにも対応しています。

 将来的に何が必要かというと、そのやり方はいろいろあると思う。Google TVは、放送とオンラインの垣根を無くすというコンセプトなので、発想としては我々に近いものがあると思う。

 今回のCEATECでは、「レグザAppsコネクト」という新しいテレビの楽しみ方を実現する機能を紹介した。録画した番組を楽しむために、ユーザーの皆さんがシーンにタグ付けしてコメントを入れたものをサーバーに保存して共有する。「この番組はお薦めだよ」など、他のユーザーのコメントを参照にしながら、テレビを楽しめる。こうしたソーシャル・サービスとの連携に力を入れています。この機能を、録画した番組以外でも使えるようにしていきたい。こういった簡単なことから初めて、テレビのインターネット接続率を高めていければいいと思います。

渡邊 将来的には、家電量販店で「ツタヤのテレビをください」ぐらいまで言ってもらえるようになればいいと思っています。Google TVについては、こうした新しいテレビが出てくることで、消費者のインターネット接続率が上がるきっかけになればと期待しています。

 Google TVは「Androidのテレビ版」ということで、スマートフォン、タブレット端末など他のAndroidベースの端末とともに、今後どのように日本の家庭に浸透していくのかを興味深く見ています。近い将来、多くの人が動画コンテンツをどこにいても楽しむ時代が到来します。AndroidをベースにしたGoogle TVは、こうした使い方を促すきっかけになるかも知れません。

司会 Google TVはFlashをサポートするなどリッチなコンテンツに対応する一方で、現在の国内市場向けテレビが搭載するデジタルテレビ情報化研究会が定めた仕様に準拠したWebブラウザーでは、できることが限定されるとの声も多くあります。

渡邊 TSUTAYA TVでは現在、HTMLベースでユーザー・インタフェース(UI)を開発しています。残念ながらFlash対応コンテンツは動きません。Google TVなどAndroid端末はFlashに対応しているし、動作も機敏。サービス提供側から見て、正直、こういう機能がテレビにあったらいいのにとか、こういう風に動いてくれたらお客さんにも分かりやすいと思う点はあります。今後は同研究会でもいいし、テレビ・メーカーと直接でもいいので、Webブラウザーなどの仕様を一緒に作っていくような動きが出てくればうれしいです。

司会 これまでヤフーはテレビに向けてさまざまなWebサービスを展開してきましたが、その経験からどのようなサービスがテレビと親和性が高いと感じていますか。将来、柱になりそうなサービスはどれでしょうか。

菅泉 当社では、今までおよそ20ぐらいのサービスをテレビ向けに展開してきました。検索サービスは開始1年半で7倍に検索数が増えました。やはり動画配信も伸びています。テレビで話題になったり、テレビで紹介された映画やお笑いのコンテンツで人気が出ています。

 この先は、マスに向けたテレビ放送をインターネットが持つインタラクティブ性やソーシャルの力で補完できればと思います。例えば、「みんなが何を考えているか」を知りたいニーズは高いのですが、インターネット経由で投票すればすぐに答えが出ます。テレビ放送を補完しながら、インターネットのサービスを開拓する余地は、まだまだあると思ってます。

司会 ネット・テレビ時代のテレビ・メーカーの競争軸は何になるのでしょうか。ハードウエアか、UIなどソフトウエアか、サービスか。

和田 テレビ・メーカーとしては、Google TVのような共通のプラットフォームを採用していては競争が難しい。やはり、ユーザーの見たいコンテンツを提供し、映画などのキャッチアップ・サービスなどに対応するなど、いかに使いやすいものを提供できるかが、最初の競争軸になるでしょう。

 究極は、ハードウエア、サービス、コンテンツのトータル、それをテレビだけでなく、マルチスクリーンというコンセプトの中で総合的に優れたエコシステムを作れるかが競争軸になると思います。

渡邊 タブレット端末でコンテンツを選ぶ時代がやってくるでしょう。そうなると、1つのIDでマルチデバイスを使えるようになります。Google TVと今の国内市場向けテレビの垣根は低くなっていくと思います。その時、TSUTAYAはどうすればいいのかというと、今のサービスを拡大していくことと、お客のニーズがあるところに出店していくことだと思います。

菅泉 メーカーとしては、ソフトウエアやサービス事業者とどう組んで、それをテレビにどう組み込んで快適に使ってもらえるかが重要になるでしょう。その時、UIについては、リモコンにボタンが多すぎるとユーザーに使ってもらえない。直感的で一元化されたUIを実現しないとダメでしょう。メーカーさんには、スマートフォンを持っていれば、4~5つのボタンでテレビも他の機器も使えるような仕組みづくりに取り組んでほしい。

 アプリケーション・ストアは、メーカーの競争軸の一つにはなるでしょう。アプリケーションはローカルのハードウエア・リソースを使えるのでリッチなことができる。HTML5を使えば、それがアプリケーションか、Webサービスかを意識しない時代が到来すると思います。