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 台北から新幹線で1時間あまり。2月でも気温が27度に達する高雄市に、台湾最大の製鉄会社、中国鋼鉄の本社がある。

 「IT戦略で最重視するのは、基幹システムにおけるデータ収集や情報共有のスピードだ」。中国鋼鉄の張世和情報システム部長は、こう断言する。同社では毎月1日の午後1時には、前月の生産実績や販売実績を、経営トップがすべて把握できる。

 月次の実績データを集計するのに使う各種データの収集は、すべてリアルタイムだ。「原材料や製品の在庫量、鉄鋼の生産量、出荷した製品の種類と数量、工場の消費電力量、さらには現場の作業員がどのラインでどの程度の作業をこなしたか、といったことまで、データが変化するつど、収集している」(同)。

図●中国鋼鉄の基幹システムにおける処理の流れ
図●中国鋼鉄の基幹システムにおける処理の流れ
エトキ
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 徹底してスピードにこだわる中国鋼鉄は、さらにスピードを高めるプロジェクトを進行中だ。「グループ企業でも同様のスピードを実現しろ」。経営トップの大号令の下、グループ全体の基幹システム刷新プロジェクトを昨年から始めた。傘下の鉄鋼会社や販売会社などは現在、会計処理や販売実績集計などを実施するのに2~3日かかっている。中国鋼鉄は主要なグループ企業21社について、これを2013年内に1日まで短縮する計画だ()。

 中国鋼鉄はグループ企業の基幹システム刷新を2段階で進める。まず2011年末までに、21社の会計コードを統一する。ただしこれは、「極めて困難な作業だ。グループ内には、煩雑なコード統一作業によって通常業務を妨げられることに抵抗を感じる人が少なくない」(張部長)。

IFRS対応を機にコード統一

 そこで同社は、IFRS(国際会計基準)対応作業の一環として、会計コードの刷新作業に取り掛かることにした。中国鋼鉄は2013年をメドにIFRSに対応することを決めている。「この対応のなかで、会計コードについてもグループ統一版に置き換える。IFRS対応の一環と認識してもらうことで、担当者の抵抗感を減らせると考えている」(張部長)。

 会計コードの統一は、経営改革の第一歩として多くの日本企業がやりたくてもやれずにいる作業だ。IFRSを“錦の御旗”とする中国鋼鉄の取り組みは、参考にできる部分が多いだろう。

 会計コードを統一してから、2013年までに各社の会計システムや在庫管理システム、販売管理システムなどを刷新する。この段階で、データ収集・集計をリアルタイムに進める機能を、順次実装していく。

 さらに2013年以降は、同社の鉄鋼製品を購入する顧客企業に調達システムを無償提供する。これによって、顧客企業との間で受発注データや出荷データ、納品データをリアルタイムにやり取りできるようにする。

 同社のビジネスの主戦場は、拡大を続ける中国市場だ。世界鉄鋼協会によれば、中国の鉄鋼需要は2011年には世界需要の45%を占めて過去最大になる見通しだという。インフラ建設や自動車生産の好調さを受けての伸びだ。中国鋼鉄は、この成長市場でのさらなる拡販を図る。