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 パリに赴任して10カ月が過ぎた。フランスはエッフェル塔やシャンゼリゼ通りといった「芸術の都」のイメージが強いが、実は「隠れたIT大国」でもある。

 その例の一つが、数年前パリで始まった“ヴェリブ”という自転車共有サービスだ。エコと健康を気遣うパリッ子の間で瞬く間に大人気となり、パリ全域に普及、隣国のロンドンにも広がった。

 実はこのサービス、裏ではRFIDカードのシステムを使っている。利用期間によって紙のチケットもしくはRFIDカードが付与される。また「Navigoパス」(フランスの公共交通機関で使われる支払いパス)に本機能を付け加えられる。このカードを自転車付属のカードリーダーにかざすだけで、パリ市内1200カ所以上の貸し出し所にある約1万9000台の自転車を、1時間1ユーロから使える。

 現在はこのサービスを自動車に応用したカーシェアリングサービスも計画中だ。2012年中には700ステーション、4000台の電気自動車が使えるようになるそうだ。日本もカーシェアリングがはやり始めていると聞くが、規模の大きさとプロジェクトの推進力ではフランスのほうが1枚上手ではないか。

 ちなみにフランスでは、メトロ(地下鉄)、バス、長距離鉄道は早くからゾーン制を導入し、パリ市内は同一料金でどこまでも行ける。利用者にとって便利なうえ、サービス提供者側も料金調整の手間や、システム投資などのコストを抑えられる。フランス人ならではのクリエイティブさとヨーロッパ人特有の合理性が結び付いた代表例だろう。

サポート面で認識の違いも

 一方で、日本人の私にとってはサポート面で日本との違いを痛感することがある。

 先日、愛用のモバイル端末が故障し、パリのサポートセンターへ駆け込んだ。数年前に日本で購入したもので保証が切れているにもかかわらず、無料でメモリーディスク交換をしてくれ、加えて容量も倍増、くたびれていたキーボードまで交換してくれた。手厚いサービスに感動したのだが、最も肝心なデータの吸い上げは対応しないという。万が一の事を考えデータをバックアップしていたため難を逃れたが、数年間大規模システムのエンジニアであった私にとっては、技術者の観点から物足りない対応であった。

 もっとも、今回の出来事を契機に、私たちが普段提供しているサービスが顧客の目線に立っているのか、技術に偏りすぎてはいないか、と自問させられた。クリエイティブさや合理性に長けた「隠れたIT大国」フランスのサービスに、日本で経験した最高品質のサポートというスパイスを加え、私なりのITの極上レシピを作り上げたい。

松岡 寛子(まつおか ひろこ)
2010年4月からNTTヨーロッパパリ支店に勤務。エンジニアとして日系企業のヨーロッパ進出をサポート。2001年米ベリオのホスティングサービスの日本での立ち上げをきっかけにグローバル事業に携わる。2007年から2008年には中国広州に勤務。現在はパリ勤務ときて、いっそ転勤で食の都制覇を目指したいが、次はどこ?