PR

 この先の10年間で検索エンジンにどんなことが起きるのかを予測するのは簡単ではありません。ソーシャルメディアの台頭などによって大きな変化が起こり、現在のような形でのウェブ検索エンジンは主流ではなくなってしまうかもしれません。

 そのような変化が起きたとしても、なお検索エンジンの技術において10年後も通用する基本とは、「ユーザーの情報要求を明確化して的確に把握する」という技術ではないかと思います。順を追ってお話していきましょう。

ウェブとともに発達してきた検索エンジン

 現在の検索エンジンは、クローラー、インデクサー、クエリーサーバーなどの構成によって成り立っており、それぞれに高度な要素技術を発達させています。これらの要素技術は、これまで検索エンジンの主な情報源であったウェブの成り立ちと深い関わりを持っていました。

 ウェブは、コンテンツや著者を一元的に集中管理することを意図的に排して、代わりに誰もが汎用的な枠組みの上で自由に情報を発信したり受信したりできるというオープンな構造に特徴がありました。ウェブのもつ自由さは、爆発的な普及を促し、活発な技術革新を育む一方で、網羅的な情報収集を困難にし、ウェブスパマーたちにも同じだけの自由を与えてきました。

 ウェブ検索エンジンのクローリング技術や、ページランクなどに代表されるウェブスパム排除技術は、こうしたウェブの構造に合わせて必然的に発達してきたのですが、近年台頭してきたソーシャルメディアにおいては、まったく様相が異なります。これらのどちらかといえばクローズドなサービスでは、特定の企業がコンテンツや著者を一元的に集中管理していますし、サービスによっては著者の実名も管理していますから、コンテンツの収集やスパムの排除を、従来よりはるかに効率よく実現できるかもしれません。そうなれば従来の技術は陳腐化してしまうことでしょう。

 大量のコンテンツに対して高速に検索するための技術に関しては、大枠としてはこれまで通りクラウドコンピューティングを駆使してスケーラビリティーを確保するという手段が取られると考えられます。しかしクラウド内で使用される索引方式については活発に技術革新が進んでいる領域でもあり、長年にわたって通用する技術を見通すことは困難です。

 検索精度を高める技術についてはどうでしょうか。現在主要な検索エンジンで盛んに利用されているのは、「パーソナライズド検索」と呼ばれる技術です。ユーザーが投入するキーワード以外に、ユーザーの現在いる場所や、使用している端末などの数十にも及ぶ項目を組み合わせることによって、言葉には表されないユーザーの情報要求を読み取り、それに合わせた検索結果を返します。さらに検索エンジンの内部では、ユーザーがこれまでにサービスを利用した履歴を集めて興味の範囲が似ているユーザーを類型化しておいて、類型化された好みを検索結果の並べ方に反映します。

 しかしこうした手法においては、検索エンジンの裏側でユーザーがあずかり知らない暗黙のフィルターが作られて、それがユーザーが見ることのできる検索結果の範囲にいつの間にか影響を与えていると見ることもできます。個人の意思とは無関係に、受け取ることのできる情報が管理されてしまうことに危惧を抱く声も上がっています。

 パーソナライズド検索技術が、10年後も現在のように利用されているかどうかは分かりません。重要なのは、検索エンジン各社がどのような目的でこれらの技術に注力しているのかという点です。