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 スカパーJSATは2011年5月11日、「スカパー!3D映像制作者ミーティング 2011」を開催した。このイベントは、3D映像による番組制作に関心を持つ制作担当者などを対象にしたシンポジウムである。3Dコンテンツの制作を手がけた5人が登壇し、体験談を報告した。

撮影

 3D映像の撮影で苦労した点として複数の登壇者が指摘したのが、カメラの設置場所が限定された点である。スカパー・ブロードキャスティング 制作本部 制作部の軽部岳大氏は、Jリーグの3D中継を行う際に高さが約2メートルのカメラを使っており、「来場者の視線をさえぎらない場所にしか置けない」という。フジテレビジョン 編成制作局ドラマ制作センター プロデューサーの関口大輔氏は、カメラの大きさが屋外ロケの阻害要因になっていると指摘した。撮影前は積極的に屋外ロケをしようと考えていたが、カメラが大きく持ち運びに手間取るため「数多くのロケの実施はとても無理」と判断した。

 関口氏は、3Dならではの立体感をより表現するための工夫についても報告した。「3Dだと曲線のほうがより立体的に見えるため、セットを曲線にするように心がけた。同じ理由から、色の基調は青にした」という。

 3Dの屋外撮影は、太陽の光や天候に左右されることも報告された。右目用と左目用の映像を屋外で撮影する場合、太陽の位置によっては片方の映像に光の像が発生し、「3D映像が破たんした」(セップ 音楽映像制作部ゼネラルマネージャー/プロデューサーの白山孝誌氏)という。さらに、「片方のテレビカメラに雨粒が付くと映像が破たんする」(スカパー・ブロードキャスティングの軽部氏)という。

表現方法

 撮影の際に3Dの立体感を生かすことをどの程度優先するかについては、現場での試行錯誤が行われた。プロ野球の3D中継を行った日本テレビ放送網 スポーツ局ディレクターの木戸弘士氏は、「3D映像には被写体が飛び出すといった刺激が求められるが、野球の競技としての面白さも映像で伝えなければいけない。このバランスを自分なりに計算した」と述べた。中継では、バックネット裏に設置したカメラを主に使うようにして、ピッチャーの投げるボールが迫ってくる様子を視聴者が体感できるようにした。スロー映像はセンター側のカメラを使うなど、状況に応じて使い分けた。

 スカパー・ブロードキャスティングの軽部氏は、サッカー撮影時の初期段階では3D映像の立体感を生かすことを優先し、低い位置に置いたカメラの映像を比較的多く使っていた。この結果、チーム全体の動きを捉える映像が少なくなり、「どちらのチームが優勢なのかが分かりにくいということもあった」という。現在は複数の選手やサポーターなど、現場の全体像が分かる映像の撮影を心がけている。「サッカーという競技を分かりやすく伝えることが大切」と述べた。

 編集作業も、3D映像は2D映像よりも時間が掛かるという。フジテレビの関口氏は、「2Dのドラマに比べて3倍から4倍の作業時間が必要になる」と報告した。

コスト

 3D映像の制作費の大きさも課題となっている。スカパー・ブロードキャスティングの軽部氏は、「3D映像の制作費は2D中継の1.5倍」という。3D映像制作のスキルを持つ専門のスタッフが必要になるほか、3D撮影ができる放送機材が首都圏にしかないため、地方での撮影には運搬費が掛かる。フジテレビの関口氏は、「2Dの撮影に比べて4倍の照明が必要なので相応のコストが掛かる。映像収録用テープも2Dの倍の量が必要」と述べた。

 スカパー・ブロードキャスティング 制作本部 制作部アシスタントマネージャーの吉澤一禎氏は、「映像編集などの作業を短時間で終えることができるようにするしかない」としたうえで、「番組の制作単価を下げる努力はするが、予算額を増やすことも必要」と主張した。

必要な機材

 5人の講演終了後、来場者から講師に対し、3D撮影を行ううえでどのような機器があれば良いと考えているか、という質問が出た。講師からは、「ウルトラスーパースロー再生に対応する機器や、審判に付けられる小型3Dカメラがほしい」(日本テレビ放送網の木戸氏)、「3D映像と5.1チャンネルサラウンドの音声を体感できるなど、視聴者がより快適に3D映像を楽しめる環境ができればと期待している」(スカパー・ブロードキャスティングの吉澤氏)といった意見が出た。