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 田中淳子氏と芦屋広太氏によるヒューマンスキル往復書簡も第5回を迎えます。田中氏の「賛成してくれる人のことを考えて行動する」という言葉を受けて、「反対されることのメリット」を芦屋氏が語ります。何かを言って反対されると、ついやる気を失ってしまいがちです。しかし芦屋氏は、「それこそが自分の意見をブラッシュアップできる良い機会」と主張します。(編集部)

淳子さんへ

 「反対する人のことをあれこれ考えるのではなく、賛成してくれる人のことを考えて行動する」(第4回「周囲の5人を味方につけて動く」)。これは、多くの人が忘れている視点だと感じます。

 人はどうしても「反対の意見」が気になるものです。それは私も同じ。賛成者に着目するという考え方には共感しました。

 もちろん、反対する人に常に背を向けていては、仕事が進みません。特に、相手が「正しく」反対しているのであれば、こちらも「正しく」対応する必要があります。大切なのは、「反対する人と上手に付き合う」ことだと思います。

反対する人と上手に付き合う

 仕事をしていれば、他人と意見が衝突するのは珍しくありません。私もよく、自分の言ったことに反対されました。

 でも、それで良いのだと思います。組織として仕事をする以上、多くの異なる考えをぶつけ合って、よい良い考えへとブラッシュアップしていくのはごく自然なことです。誰かの意見に反対する人が全くいない状態のほうが、むしろ正常ではないと考えています。

 とはいうものの、何かを提案するのは勇気が要ります。誰でも、反対されるのが怖いからです。特に新人や若い人は、意見を言いたいけれど「反対されたらどうしよう」と葛藤が生じることが多いのではないでしょうか。

 「意見を言おうか」「どうしようか」とあれこれ考えて悩む。そのあげく、勇気を出して自分の意見を言ってみた。すると、「それは、あまり意味がないね」などと、すげなく言われる。

 その人は、「せっかく言ったのに、もういいや」とやる気をなくして黙ってしまうかもしれません。でも、そこで諦めたら成長はありません。

 そもそも、なぜ自分の言ったことに反対されるのでしょうか。多くの場合、「言ったことのレベルが低い」「意見が熟考されていない」などが理由です。要は、組織の中での意見としては“未熟”であるということです。この点を理解せずに、「他人がわかってくれない」と思うようでは、いつまでたっても能力が上がりません。

 反対する人の意見を受け入れることで、自分の考えがより磨かれていく可能性が高まります。そうした経験を積み重ねていくうちに、誰もが納得できる意見を言えるようになるものです。「反対する人と上手に付き合う」ことが大切ではないでしょうか。

反対されるとネガティブな感情を抱く

 私は、会社やセミナーでヒューマンスキルを教えています。その科目の一つに「説得的コミュニケーション」があります。自分の考えを他人に説明して、納得させる技術のことです。

 組織で行う仕事では、反対されるのが当たり前だと言いました。それでも、いつも反対されてしまい、自分の意見を通せないようだと、さすがにストレスがたまってしまいます。そうならないように、特に若い人たちに説得的コミュニケーションを教えているわけです。

 一番最初に教えるのは、「心の持ち方(マインドセット)」です。「人と人の意見は違う」「意見が違うと意見が広がる」「様々な意見の中から良いところを集めれば、より良い意見になる」といった考え方のことです。

 心の持ち方を最初に教えるのは、反対される恐怖感を取り除くためです。人は反対されると、「嫌だ」「苦痛だ」「逃げたい」「面倒」といったネガティブな感情を持つものです。「反対される」ことが自分に大きなデメリットをもたらすと認識しているからです。

 多くの場合、反対されると「自分が窮地に陥る」事態や、資料の取り直しや分析のやり直しといった「作業手間が増える」事態が発生します。これらをデメリットと感じてしまい、「嫌だな」と思う感情とともに記憶されるのです。