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 2005年8月に内閣府が「事業継続ガイドライン」を出してから約6年がたった。内閣府の2009年11月の調査で事業継続計画(BCP)を「策定済み」と回答していたのは大企業で28%、中堅中小企業で13%。また、「策定中」まで含めた場合は、大企業で58%、中小企業で27%であった(企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査)。今回の震災では多くの企業が初めてBCPを発動し、その有効性が問われたといえる。

 企業によって、BCPの章立てや体裁、具体性に差はあったものの、当社クライアントから入った情報から判断する限りは、BCPの有効性が確認され、その必要性が強く認識されたといってよい。以下に実例を挙げよう。

  • 「優先的に復旧・再開すべき製品・サービス・オペレーション」を選定していた企業は、経営者不在の状況でもスムーズに復旧作業を進めることができた
  • 目標復旧時間の達成に向け、重要な機能を耐震性の高い建物に移設し、併せて停電対策を実施していた企業では、東日本大震災発生後も業務を継続することができた
  • 工場のBCPを検討した結果、荷重が過多だった配管ラックから不要配管を撤去した企業は、致命的な損害を免れることができた
  • 地震対応マニュアルとBCPに基づいて準リアルタイム型のシミュレーション訓練を実施していた企業では、対策本部が混乱無く立ち上がり、冷静に情報収集を行い、役員を含めて業務復旧に関する指示命令を行うことができた

業務の優先順位を付けていないBCPが失望を招くのは当然だ

 ところがその一方で、地震災害を対象としたBCPを策定していたが、今回の震災後に「BCPを策定する意味があまりないのではないか」などの否定的意見が社内で噴出してしまった企業もある。そうした意見の人は、連鎖的に発生した交通インフラの途絶や、帰宅・出社困難な従業員の発生、原発事故、燃料不足、計画停電、サプライチェーンの途絶といった想定外の事象に対応できなかったことを根拠に挙げているという。

 こうした失望の要因は、主に3つ考えられる。(1)BCPが「万能な計画である」と誤解されていること、(2)震災後に発生した様々な事象に対応できる柔軟性に乏しかったこと、(3)連鎖的に発生した様々な事象への対応の検討が不十分だったこと――などだ。

 (1)のような誤解が社内ではびこっているケースは少なくない。だがBCPが万能であると考えていた人は、意味を再確認してほしい。BCPとは「人・モノ・情報・資金が不足したり使用不可となった厳しい条件下で、重要な製品の出荷やサービスの提供を継続または早期再開するための戦略と対応計画」である。

 つまり、会社の全ての業務を早期に復旧させることを目的とすべきではないのである。経営の視点から重要な業務を絞り込んでおくことが欠かせない。すなわち「ビジネスインパクト分析」を実施し、重要業務の絞り込みと、重要業務に欠かせない経営資源の特定、復旧の優先順位付けと許容停止時間を平常時から検討しておかなければならない。

 (2)の柔軟性の問題とは例えば、拠点ビルに耐震対策を施してオフィスへの被害は軽微であったのに、交通インフラが混乱したり、停電したり、PCの端末が使えなかったりして、重要業務を継続できなかったケースだ。

 逆に柔軟性の高い事業継続戦略の例としては、代替拠点の確保や地域的な分散化といった対策が挙げられる()。ただし、このように立案した事前対策が、予算との兼ね合いでペンディングになっていることも少なくない。

図●「柔軟性の高い計画」のイメージ
図●「柔軟性の高い計画」のイメージ
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 (3)の事前の検討が不十分だった場合は、事態が進展するたびに新たに検討を行わなければならなかったため、「事前に計画を立てても意味がない」と受け止められてしまったと考えられる。

 この場合はBCPを見直すというよりも、緊急時対応計画(もしくは「災害初動対応計画」)の見直しが必要、と認識したほうが適切だ。緊急時対応計画とは、災害・事故などの発生から数時間~2日間といった初動期に対応すべき行動について整理したものをいう。BCPに緊急時対応計画を含むケースは多い。

 例えば、安全確保や安否確認、被害の拡大防止、被害や影響の軽減、社内体制や指揮命令系統、広報対応、地域貢献・被災地支援などである。今回の震災を踏まえて、津波避難計画、地震初動対応計画、突発停電対応計画などを見直すことをお勧めする。

 ただし、緊急時対応計画の対象は本来、事業中断を引き起こす出来事に限定されない。自社従業員の不祥事、製品の品質異常、異物混入、食中毒、情報漏洩など、幅広いリスクを対象にして再検討することが望ましい。このため同計画は「危機管理計画」と呼ばれることもある。