ビジネスブレイン太田昭和
会計システム研究所 所長
中澤 進
前回に続いて、「単体財務諸表に関する検討会議」の報告書の内容を整理し、筆者の感想および意見を述べてみたい。
同検討会議では、IFRS(国際会計基準)のコンバージェンス(収斂)やアドプション(適用)を検討するにあたり、金融庁が「連結先行」の考え方を打ち出す中で、単体(個別)財務諸表についてはどう考えるべきかを議論した。計6回の議論を経て、日本の会計基準の策定主体であるASBJ(企業会計基準委員会)が2011年4月28日に報告書を公表した。
前回は、検討会議の趣旨と、個々の会計基準に関する検討のうち「開発費」を取り上げた。今回は個々の会計基準に関する検討のうち「のれん」「退職給付」「包括利益」に触れてから、報告書について全体的な感想と提言を述べることにしたい。
前回と同様、太字部分が報告書の内容(筆者が一部修正)、その下が筆者の感想または意見である。
個々の会計基準に関する検討:のれん
償却とすべき意見
のれんは、事業買収に伴う将来収益に対応するコストであり、収益と費用の対応の観点からも償却すべきとしている
開示すなわち連結ベースの話は、良し悪しは別としてIASB(国際会計基準審議会)/FASB(米国財務会計基準審議会)で決着しているはずである。単体でどう取り扱うかは、日本基準でどうするかと同義であろう。
事業環境の悪化に伴い一気に損失が表面化し、不安定さが増幅するとしている
この議論も、グローバルには一旦終了している論点であろう。これも、日本基準なるものをどうするかという議論である。
非償却とする意見
IFRSと米国基準のコンバージェンスは終了しており、比較可能性からコンバージェンスを図るべきである。単体・連結は、できる限り一致が望ましい
単体の議論は税法、会社法との関係を考えていかなければならない。この問題が解決できるのであれば、単体と連結は同じ基準が良いのは当然である。
連結財務諸表について
これも両方の意見が出された
のれんの非償却・減損は、証券市場への開示という視点では議論の余地がないはずである。この期にいたって、IASBが償却を認める可能性があるか、はなはだ疑問である。
個々の会計基準に関する検討:退職給付
何らかの激変緩和の措置が必要との意見
これも開示視点ではIFRS(IASB)に従うしかないと考える。