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 大阪都構想は現行制度を根底から見直す案である。そのため、マスコミ関係者や地元の事情をあまりご存じない識者の方々から誤解されることが多い。前回に引き続きQ&A形式で解説したい。


誤解その4:「大阪都ができると巨大な自治体が出現する。かえって非効率ではないか」

 都構想では、いったん大阪市役所と大阪府庁を合併させる。だが同時に地下鉄、バス、水道、ごみ収集などの現業部門は別法人化する。東京都のように都営で地下鉄や水道を直営管理する(非効率な)体制はとらない。

 大阪市営バスは路線別に各私鉄に事業譲渡する。先例は札幌市である。バス路線を民間企業に移譲した。京都市もすでに民間のバス会社に業務委託をしている。もちろん民間に任せた上でどうしても赤字が避けられない路線には補助金を出す。

 また現業部門の過剰設備は廃棄する。典型的にはごみ焼却工場である。大阪市は全国でも最もリサイクル率が低い自治体のひとつである。シミュレーションをしてみたところ、大阪市内で横浜市並みにリサイクルが進めば、市内のごみ焼却工場が3つも廃止できる(森之宮工場など)。

 水道も過剰設備を抱えている。これも大阪市と大阪府の経営統合で整理できる。たとえば大阪市営の柴島浄水場は老朽化しており、運営コストがかさむ。これを廃止し跡地を再開発すれば、更新費用も不要となり1000億円もの余剰資金を捻出できる可能性がある。

 このほか、地下鉄は建設資金の償却が順調に進んでおり、民営化が十分に可能である。東京メトロにならって株式会社化すればよい。


誤解その5:「大阪市役所を解体して8~9の特別区を置くと区議会の運営でかなりのコストがかかる。非効率ではないか」

 そもそも議員の数が増えると無駄なコストが増えるという考え方自体が間違っている。区議会議員には数や報酬に見合った仕事をしてもらえばよい。各区の職員がいままでやっていた仕事を議員が担うようになる。公務員の人件費が議員の人件費に置き換わるに過ぎない。なお、市議会議員の数は現在89人だ。区議会ができると議員の総数は増える。だが東京23区のように各区で30人から50人もの議員を置く必要はないだろう。

 都構想は全体として膨大な行政コストの削減効果を生み出す。加えて広域行政の推進による経済再生や大阪都民の所得の向上などの効果ももたらす。全体としての都構想のメリットの大きさに照らすと、たかが区議会8~9つの運営に要するコストなど無に等しい。

 そもそも大阪市を解体し24の区役所を再編成することで、公務員の数を2割は削減できる。現在の大阪市役所は横浜や福岡に比べて人員数もコストも大幅に過剰である。これを是正するだけで1000億円以上のコスト削減が可能だ。実際には現業部門は別法人化するので、もっと減ることになる。


誤解その6:「大阪都になった場合、都庁と特別区の間の財源調整がどうなるか不安だ。国からの交付金も減らされるのではないか」

 都構想は、あくまで地域政党「大阪維新の会」が提唱している。大阪府庁、あるいは知事が提案する行政機構の改革案ではない。財源調整や特別区の区割りなどの具体的な制度設計は統一地方選挙を経て、「都構想は少なくとも検討の意義あり」という民意が確認できてから着手すべき作業だ。府庁と市役所が連携した検討体制をつくり、制度設計の専門家も交えた上で国とも協議しつつ作業を行う。そうした作業がまだ始まっていない段階で心配しても仕方がない。

 ちなみに現行の地方自治制度や地方財政制度、地方交付税交付金制度を前提に、「大阪都構想では財源不足に陥る」といったネガティブキャンペーンを行う向きがある。しかし大阪都構想への移行の際には当然、国から都への権限と財源の移譲を想定する。それと同時におそらくは、護送船団方式で維持してきたわが国の地方自治と地方財政制度も終わりを告げる。

 今のわが国の財政状況に照らすと、現行の制度はいずれ立ち行かなくなる。それにもかかわらず「大阪都構想は成り立たない」と騒ぐのは愚の骨頂である。どうせ行き詰まるのなら、早めに大阪側も国側も仕組みを根こそぎ変えてしまおうというのが都構想なのである。

 全国各地に地域政党ができると当然、国政にも影響を与える。「法改正はたいへんだ」「総務省がイエスと言わない」といった見方は古い。政治主導で変えればよい。頭の隅々まで現行制度に染まってしまっている既存政党や行政学者の意見に惑わされてはならない。

上山 信一(うえやま・しんいち)
慶應義塾大学総合政策学部教授
上山信一


慶應義塾大学総合政策学部教授。運輸省,マッキンゼー(共同経営者)等を経て現職。専門は行政経営。2009年2月に『自治体改革の突破口』を発刊。その他,『行政の経営分析―大阪市の挑戦』,『行政の解体と再生』,『大阪維新―橋下改革が日本を変える』など編著書多数。