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 総務省 情報通信審議会の電気通信事業政策部会と電話網移行円滑化委員会は2011年6月17日、加入電話網(PSTN)からIP網への移行に関する2回目のヒアリングを行った。今回はフュージョン・コミュニケーションズと新潟通信サービス、テレコムサービス協会、綜合警備保障、日本カードネットワーク、藤沢市、全国消費生活相談員協会ら利用者側の事業者や団体が意見を述べた。

 日本カードネットワークは、低速/少量/断続的な通信で十分なカード決済という用途において、コスト以外の理由でブロードバンド回線に移行する理由がないと現状を説明した。また前回のヒアリングで、NTT東日本がPSTNからIP網への移行に5年間の移行期間を設けるので、その間に設備更改時期を迎えた端末から順次IP網対応端末に切り替えて欲しいと説明したことに対して、「端末の耐用年数は5年以上あり、5年の移行期間では不十分」と反論した。またIP網対応端末の新規開発にも否定的で、NGN向け端末を開発したとして「他事業者のネットワークやグローバルに利用可能な相互接続性を確保できるのか」と問題点を指摘した。

 綜合警備保障は、IP網移行によって「信号監視通信」が廃止されることによる影響と、停電時に通信が停止してしまうことなどを問題点として挙げた。従来のPSTNはNTT局舎からの給電があったため、自宅が停電しても利用できる場合が多かった。IP網では自宅が停電して宅内機器の電源が入らなくなると、利用できない。

 藤沢市は、自治体が利用している通信回線をIP網に統合した場合に懸念される課題について説明した。これまでにNTT東西がIP網への移行について発表している「概括的展望」などでは、網についての切り替え時期ははっきりしている一方で、物理的なアクセス回線の切り替え時期の説明が不足しているという。また金銭面での負担額や、それをどう手当てするのかも不明で、移行計画を立てにくいという状況を説明した。また、内線など部分的にIP化を行ったところ、停電時に通話ができなくなることの影響が顕在化している。

 同市は電源設備の法定点検を年末に行っており、その際の停電でIP電話は利用できなくなる。すでに法定点検中に住民との連絡が取りづらくなる事例も発生しており、全面的に電話をIP化することにリスクを感じているという。さらに同市は高齢者向けに、PSTNを利用した緊急通報サービスを提供しており、IP網に切り替えた際に通報装置が問題なく動作するか、装置交換が必要な場合の費用を誰が負担するのかといった課題を指摘した。藤沢市の担当者は「自治体の多くはIP化の理念は理解するものの、対応するための予算がない」と実情を訴えた。

 網移行に伴なう利用者端末の切り替え問題についてNTT東日本は「切り替えによって確かにISDN向けの端末は利用できなくなるが、PSTN向けに開発された端末は大半がIP網移行後も継続利用できる見通しだ。サービス事業者の懸念はよく分かるが、それほど心配はいらない」とする見解を示した。また網の移行で浮くコストを、低速/少量/断続的な通信向けにどう還元できるかといった点について、今後関係者も交えながら検討すると述べた。

 フュージョン・コミュニケーションズは、NTT東西のNGNにおいて、PSTNにおけるマイラインのような仕組みがなく、利用者保護や競争環境の整備といった観点から問題があると指摘した。対策として(1)NGNにおけるマイライン制度の導入と、(2)接続事業者によるNGN電話サービスの提供の2案があり得ると提案した。(1)については、料金単価の小さいIP電話市場ではコスト面で事業として成立させることが難しいと評価し、(2)については通話品質確保のためにNGNの帯域制御機能のアンバンドルが必要と説明、案(2)をベースとした競争環境を早期に整備すべきと主張した。

 テレコムサービス協会は、現在PSTNを利用しているユーザーの多くが特に不便を感じていないことから、自発的にIP網へ移行するユーザーはこれ以上増えないとする見解を示した。魅力的なサービスを提供してNGNの利活用を促進するためには、NGNのオープン化が欠かせないという。またNTT東日本が2011年6月に提供を開始した低価格の「フレッツ光ライト」については、基本料がISDNよりも安いが加入電話よりは高く、一層の値下げが必要と述べた。新潟通信サービスは、網移行に伴う利用者と接続事業者への負担を極力軽減することと、接続事業者が事業を継続できるように分岐貸しやラインシェアリング、GC接続の簡素化などを訴えた。