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有限責任 あずさ監査法人
食品業ワーキンググループ
マネジャー 公認会計士
川村 利洋

 本連載は、日本企業がIFRS(国際会計基準)を導入する際の留意点からIFRSによるインパクト全般までを主要な業種別に見ていくことを目的としている。前回は小売業におけるIFRS導入のポイントを説明した。今回は食品業について、リベート処理を中心に見ていく。

リベートの現状

 リベートとは、一定期間に取引数量や売上高など一定の条件を満たした得意先に対して支払う報酬のことを指す。すべての得意先に対して支払うわけではない。特定の得意先との契約に基づき、エンドユーザーに対する商・製品の販売に関して、一定の協力を得ることを目的として支払われる。

 食品メーカーがリベートを支払う対象は、主に問屋や小売店である。一般消費者などへの販売量、あるいは製品の販促活動や販売協力といった行為への対価として、事後的に支払うケースが多い。

 食品メーカーの場合、販促活動の方法やリベートの支払条件が多岐にわたることが特徴として挙げられる。使用している勘定科目名も、「販売促進費」や「販売手数料」、「拡売費」、「拡販費」など様々である。有価証券報告書で開示している食品関連メーカーの販促関連経費の例を表1に示す。

表1●食品メーカーと販促関連経費の例
会社名 経費科目 金額 売上高に
対する割合
決算期
明治製菓(明治) 販売促進費 539億円 13.1% 2010年3月期
森永乳業 拡売費 666億円 11.4% 2010年3月期
雪印メグミルク 販売促進費 361億円 9.2% 2010年3月期
日清食品ホールディングス 拡販費 602億円 16.2% 2010年3月期
キューピー 販売促進費 181億円 3.9% 2010年11月期
*有価証券報告書で開示している連結損益計算書および「販売費及び一般管理費」の内訳科目をもとに作成。上記の金額が得意先に支払っているリベートに該当しない可能性もある

 各社とも、多額の販促関連経費を計上していることがわかる。

売上高の減額処理となる可能性も

 多くの食品メーカーは現在、得意先に対して支払ったリベートを経費(販売費及び一般管理費)として会計処理している。IFRSが適用されると、それらを売上高の減額として処理しなければならなくなる可能性がある。

 言うまでもなく、企業にとって売上高は最も大切な業績指標である。リベートが売上高から減額されると、決算や業績予測への影響はもとより、社内管理上も大きな影響が出てくることになる。

図1●リベート10の場合の会計処理の違い
図1●リベート10の場合の会計処理の違い

 例えば、売上高が100の会社でリベート10が発生したとする。これまではリベートを経費処理していた(図1左)。IFRS適用後、リベートを売上高の減額として処理することになると(図1右)、決算上の営業利益は変わらないが売上高や売上総利益は減少し、原価率が上昇することになる。

 なぜこうした違いが生じるのか。日本の会計基準とIFRSの違いについて、もう少し詳しく見ていこう。