PR

 「破壊的な脅威をもたらすのは、新しいテクノロジーではなく新しいビジネスモデルだ」。米インテルの元CEO(最高経営責任者)アンディー・グローブは、かつてこう語った。本書の著者マーク・ジョンソンが執筆を思い立ったのは、この言葉がきっかけだった。

 著者は、成功するビジネスモデルは「四つの基本要素」の組み合わせで構成されると説く。すなわち「顧客価値提案(顧客にとってのメリット)」「利益方程式(収益、コスト計算)」「経営資源(人材、資金、ブランドなど)」「業務プロセス(評価基準、行動規範など)」の四つだ。

 ビジネスモデルの解説だけでも読み応えは十分だが、本書の真価は「成功した企業ほどイノベーションに失敗しやすい」という問題を分析した部分にある。

 ジョンソンが典型例の一つとして挙げるのが米コダックだ。コダックの技術者が最初のデジタルカメラを発明したのは1975年のこと。しかし当時のコダック社内には「フィルムと競合する可能性のあるものを片っ端から排除する抗体が存在」し、経営陣はデジカメの可能性を黙殺した。結局コダックは銀塩フィルムに固執し、ビジネスモデルを大胆に転換した日本メーカーがデジカメ市場を席巻するのを許すことになる。

 ところが、コダックに勝利した日本メーカーの将来にも暗い影が差し始めた。米アップルのiPhoneがデジカメ市場で急速に台頭しているからだ。アップルの破壊的なイノベーションが、デジカメ市場を大きく変えつつある。大手写真共有サイトFlickrが公表している使用カメラ統計では、6月時点でiPhone4がニコンD90とほぼ同率で1位になっている。このすう勢からすれば、7月にはiPhone4が単独1位になっているだろう。

 これはデジカメに限った話ではない。日本の製造業の多くは単なる製品改良ではなく、ビジネスモデル自体のイノベーションを迫られている。これまで成功してきた企業の人々にこそ読んでもらいたい一冊だ。

評者:滑川 海彦
千葉県生まれ。東京大学法学部卒業後、東京都庁勤務を経てIT評論家、翻訳者。TechCrunch 日本版(http://jp.techcrunch.com/)を翻訳中。
ホワイトスペース戦略

ホワイトスペース戦略
マーク・ジョンソン著
池村 千秋訳
阪急コミュニケーションズ発行
1995円(税込)