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 ベンチャーの成功の秘訣は「不可能だと思わないこと」。ブランク氏は、技術革新を生んだ企業の多くに共通するエピソードが、何事でも可能だと考えることという。日本でも「怖いもの知らず」と言われるように、若さの特権だ。逆に、「それは無理だ」と思えば、革新的なものは生み出せなくなる。(ITpro)

 何がアントレプレナーを成功させるのでしょう。よく聞く答えは、スピード、タフさ、ねばり強さ、チャンスをつかむうまさなどです。「よく分かっていなかったから」という答えは返ってきません。

「不可能ではない」から生まれる

 最近、ジェシカ・リビングストン女史の「創業者の働き方(Founders at Work)」という本を読み返しました。その本に登場する話題に共通するエピソードは、創業者とその仲間が「これからやり遂げようとしていることは不可能だ」と考えていないときに限って、技術革新が起こることです。

 アップルのスティーブ・ウォズニアック氏は、フロッピーディスク・コントローラを見たこともないのに、Apple IIのフロッピーディスク・コントローラを開発しました。米フェアチャイルド・セミコンダクターの創業チームのゴードン・ムーア氏とジーン・ホアニ氏は、世界最初のシリコンを拡散させたPNPとNPNトランジスタを開発しようとしていましたが、代わりにプレーナ型トランジスタと集積回路を開発しました。「それが不可能だとは思わずに、実現した」。これは、技術革新における共通のエピソードとして頻繁に登場します。

 私は幸運にもこれと同じことを、ザイログとMIPSにおいて驚くほど少ない技術者チームがマイクロプロセッサーを開発するのを目の当たりにしました。さらに、アーデントのように極めて小さな会社がスーパーコンピューターを開発し、エピファニーではデータウエアハウスを開発するのを間近に見てきました。

 これらの革新技術のほとんどは、20代の若者と30代の数人が開発しました。これらのエピソードに共通することは、プロジェクトを完成するのに要した肉体的努力です。アントレプレナーは数日間も寝ないでプロジェクトを終わらせたり、出荷するまで仕事場で寝泊まりしたりしました。私も真夜中のフライトに数え切れないほど乗りましたし、エンジニアたちとオフィスで寝たこともありました。

年を取るとは知りすぎることを意味する

 年配のアントレプレナーが革新技術の企業を創業できないのではありません。もちろんできます。年配のアントレプレナーは、賢明に、そして戦略的に取り組みます。しかし私がみたところ、年配の創業者たちにはエンジェルやベンチャーキャピタルの投資がさほど分配されません。

 彼らが、もし本当に戦略的な創業者であれば、その事業の目標が不可能だと考えない20代や30代の若者を雇います。エピファニー時代の私のパートナーだったベン・ウェグブライトはまさにそれを実行しました。

 年を取るとともに、アントレプレナーの老若の違いはスタミナだけではないことに気付きます。年を取ることの落とし穴の一つは、何が可能で何が不可能かの常識を受け入れやすくなることです。経験を積むことが、時に独創的に考えることの妨げになり得ます。過去20年間に問題を解決できなかった回数を思い出し「それは不可能なのだ」と分かってくると、それは洞察力と想像力の足かせになります。これは個人だけでなく、企業でも一定の年数を経ると同じことが起こります。

 あなたが若ければ、何ごとも可能に見えます。そして、その通りになります。今回学んだことは「ハングリーでいこう、ばかになれ!」(2005年のスタンフォード大学卒業式におけるスティーブ・ジョブズ氏の講演(前半)同講演(後半))、ということです。

2010年10月13日投稿、翻訳:山本雄洋、木村寛子)

スティーブ・ブランク
スティーブ・ブランク  シリコンバレーで8社のハイテク関連のスタートアップ企業に従事し、現在はカリフォルニア大学バークレー校やスタンフォード大学などの大学および大学院でアントレプレナーシップを教える。ここ数年は、顧客開発モデルに基づいたブログをほぼ毎週1回のペースで更新、多くの起業家やベンチャーキャピタリストの拠り所になっている。
 著書に、スタートアップ企業を構築するための「The Four Steps to the Epiphany」(邦題「アントレプレナーの教科書新規事業を成功させる4つのステップ」、2009年5月、翔泳社発行)がある。