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 シリコンバレーに赴任して2年半が過ぎた。日本からの出張者には、「で、どの辺りがシリコンバレーなの?」と尋ねられることがままある。そこで調べてみた。

 通称「シリコンバレー」は、サンフランシスコから車で南に約1時間下ったところに位置する広大なITハイテク産業地域を指している。

 この地域の総人口は約200万人いるといわれており、最大規模のサンノゼ市が約100万人。ほかにサニーベイル、サンタクララ、マウンテンビュー、ミルピタス、パロアルト、クパチーノなどの都市を含む。地理的にはサンタクララバレーと呼ばれるエリアなのだが、明確な境界線はないようだ。

 赴任した直後の2009年、この地では大手のIT企業のレイオフが目立っていた。私の職場でも、当時は顧客企業の担当者が突然レイオフされたり、IT予算のメドが立っていないと伝えられるなど、厳しい状況下での営業活動だったことを思い出す。

 それから2年後の今年は全く異なる。レイオフどころか、米グーグルは今年6000人を採用するという。また米アップル、米オラクルといった老舗も再び存在感を増している。グーグル、米フェースブックといったWeb系企業が台頭し、さらにクラウド系のスタートアップ企業も多く生まれてきている。

サンフランシスコに新たな動き

 このように変化が激しいシリコンバレーの中で、代表格と感じる企業はやはりアップルだ。例えば、スターバックスでも、現地企業のオフィスに訪問しても、ほとんどの人がMacBookを使っているように思える。昨年のiPad発売から1週間後、たまたま乗った国内便では、ファーストクラス20席のうち15席でiPadを使っている様子を見かけた。目立つのは製品だけではない。サンノゼの市街地にはウォズ通り(Woz Way)という道まである。言うまでもなく、アップルの創業者の一人、スティーブ・ウォズニアックの愛称だ。サンノゼ市民である彼の社会活動や寄付に対して、感謝の意を表した道だという。

 他方、Web系企業として急成長しているフェースブックは、シリコンバレーに新しい流れを作り出している。同社のプラットフォームは、ソーシャルゲームなどを開発するスタートアップ企業も生み出した。そしてそれらの企業は、サンノゼ近辺ではなく、サンフランシスコに本社を構える例が増えている。金融街近くの倉庫を改築し、様々な装飾を施してオフィスとして利用し始めているのである。

 シリコンバレーは、そこに集まった様々な産業の成長と同時に、今後も拡大を続けていきそうだ。「で、どの辺りがシリコンバレーなの?」。数年後には回答が変わっている予感がする。

岩永 祐一(いわなが ゆういち)
KDDIの米国現地法人であるKDDIアメリカのサンフランシスコ支店長。1993年国際電信電話株式会社(現KDDI)入社以来、日本における外国企業向け営業、外国通信キャリアとの交渉、国際データ通信サービスの販売促進業務を経て、2008年10月より現職。現在はサンフランシスコを駐在して米国企業に対する営業活動を統括、米国内を東奔西走している。米国駐在中に米国本土48州の四方のカド地を訪れるのが目標。残り二つ。