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 今回は、グループ内に複数事業を持つ大手製造業の経営企画部Y部長の視点から、IFRS(国際財務報告基準または国際会計基準)適用の影響を検討する。IFRSを適用すれば、株主など外部のステークホルダーにとっては透明性が増すといわれているが、経営管理という内部視点から見ると、管理レベルの低下を招きかねない面もある。

経営管理の在り方は見直すべきか

 来年度の予算も無事にまとまり、新年度の始まりに向けて一息ついていたころ、社長からこう問いかけられた。「IFRS適用で業績管理制度の見直しが必要になるなどといわれている。経理部門だけでなく、経営企画部も何かしら対応が必要となりそうだが、Y君はどう思っているのかね?」

 突然の問いに戸惑いながら「正直あまりよく分かっていません」と答えると、社長から「実は私も、経営方針や事業モデルを変えるわけでもないのに、経営の何かを変える必要があるのかどうか半信半疑なんだ。この件について早々に検討してみてくれないか」と宿題を出された。

 そこで翌日、とりあえず私は経理部のS部長を訪ね、いろいろ教えてもらった。例えば、マネジメントアプローチといって、経営・事業の管理情報を投資家に公開していくことになり、それに伴い財務数値と管理情報の財管一致が今以上に必要になること。収益認識が出荷基準から検収基準になること。設備の耐用年数の見直しが必要になること。資産除去債務を認識する必要があることなどだ。

 けれども、まだ体系的な理解ができていない気がする。特に気になったのは「原則主義(プリンシプルベース)」と「BS(貸借対照表)中心=資産負債アプローチ」という2つのキーワードだ。

 原則主義は、細則主義の対比語だ。細かな規則を作っても、粉飾会計をしていたエンロン事件を防げなかった反省などから、IFRSでは個々の企業の実態に即した会計処理を行う原則主義が採られたのだという。株主などからの信頼性向上を重んじたルールであることは容易に理解できた。

 BS中心については、株主など投資家が、売り買いの対象としての企業の価値をより正確に算出するための視点なのだと理解することにした。

 「原則主義もBS中心も、企業価値を正確に外部に報告するためだということはよく分かる。しかし経営管理という内部視点との整合性はどうなのだろうか?」─。この点が引っかかってきた。

PDCA管理のレベル低下の懸念

 経営企画部門における担当業務を内部視点と外部視点という2つの観点から整理するとこうなる。

  • 内部視点の業務─業績や中期計画、予算の作成などのPDCA(計画・実行・検証・見直し)管理業務
  • 外部視点の業務─M&A(合併・買収)における投資判断や、新規事業や成長事業への投資判断、不採算事業からの撤退判断など価値基準をベースとした意思決定支援業務(図1
図1●経営企画部門の業務概要
図1●経営企画部門の業務概要