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著者に聞く

 出版界とネット業界を代表する2人の経営者の共著。「小さなことにくよくよしろよ」「良薬になるな、劇薬になれ」など、35のキーワードで仕事論を展開する。著書に込めた思いや制作過程を藤田氏に聞いた。

(聞き手は小林 暢子=日経情報ストラテジー

出版のきっかけは。

 見城(徹・幻冬社代表取締役社長)さんとは2005年ごろから交流があり、出版事業で協力していた。あるミーティングで見城さんが発した「憂鬱じゃなくちゃ仕事じゃないよね」という言葉が自分の腹に落ちて、ツイッターで書いたところ大きな反響があり、編集者から出版企画を持ちかけられた。

見城氏とは年齢差があるが。

 ネットビジネスで急成長してきたが、ライブドア事件をきっかけに、ネット業界特有のドライな考え方では、社会や産業界と折り合いをつけられないと感じるようになった。かといって凡庸な会社になってはつまらない。義理や人情、チームの和といった日本的な価値観を大切にしながら、凡庸に陥らないためにどうあるべきかを考えるうえで、見城さんに大きな影響を受けた。

本著で挙げられた35の言葉の中で一番印象深いのは何か。

 やはりタイトルの「憂鬱でなければ仕事じゃない」だろう。ネットバブルが崩壊した時も苦しんだが、それ以上につらかったのは2007年に自分以外の取締役を全員交代させた時だ。避けて通りたい最も憂鬱な仕事だったが、結果的に事業は飛躍的に伸びた。

 憂鬱なことがあまりない時は、自分が成長していないと感じる。今の能力ですいすいとこなしていける仕事ばかりしていると、止まってしまう。責任とプレッシャーの中で新しいことに挑戦し、壁を乗り越えることにこそ成長実感がある。

 社員にもそうした経験を積ませたい。当社には「ジギョつく」や「あした会議」といった新規事業のコンテストがあるが、これもプレッシャーを与えるためのもの。現状の仕事がうまく回っていて忙しければ、わざわざ新しいことに挑戦しようとはしない。絶対やらなくてはいけないシチュエーションを作って、自分たちに鞭打つからこそ新事業を生み続けられる。

販売は好調だが、本作りの苦労はあったか。

 一つひとつの言葉について2人で議論しながら進めていったので、それだけで半年以上かかった。ブログや雑誌の連載で自分の考えは言い尽くしたと思っていたが、見城さんの言葉に触発されて新たにいろいろな思考が生まれた。うちの役員からも「長い付き合いだが、初めて聞く話ばかりだった」と驚かれた。

 「パーティーには出るな」「行く気がないのに、今度、飯でもと誘うな」という言葉は社内外で反響があり、パーティーに招いてくれた知人から謝りのメールが来てしまった。今後の個人生活にも何かと影響を及ぼしそうだ。

藤田 晋(ふじた すすむ)氏
サイバーエージェント代表取締役社長
1973年生まれ、インテリジェンスを経て1998年より現職。『渋谷ではたらく社長の告白』などの著書がある
憂鬱でなければ、仕事じゃない

憂鬱でなければ、仕事じゃない
見城 徹/藤田 晋著
講談社発行
1365円(税込)