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 東京電力と東北電力管区内で生じた電力不足は、この夏、中部電力や関西電力や九州電力を含む全国に飛び火した。夏を越えて停電の危機はいったん収束したが、今後のエネルギー対策の行方によっては、今後何年にもわたって電力不足が続くかもしれない。

 一方、米国では以前から慢性的な電力不足が問題になっている。スマートグリッドが提唱されているのは、その対策の一環である。米国は日本と比べて変電所や配電網のインフラが老朽化している。それだけでも停電の原因となる。シリコンバレーでは、データセンターを建設するのに必要な大規模電力の確保が困難になってきている。北部と中部カリフォルニアを管区とする電力会社PG&Eの本社はサンフランシスコにあるのだが、皮肉なことに本社周辺で電力を多量に消費するデータセンターの建設が不可能となっている。

 カリフォルニア州の消費者に限れば、2000年の計画停電以来、電力を心配する事態にまでは陥っていない。もちろん、先日のサンディゴ地域の大停電(関連記事)のようなことが、今後カリフォルニア州にも起こらないとは限らないのだが。

 装置の故障や需要と供給のバランスが崩れるなどの電力系統障害が起こっても、系統の規模が大きければ、その障害を吸収して問題を解決できる(関連記事)。米国の送電網は大きく三つに分かれている(関連記事)。最も小さいのが、テキサス州だけをカバーするものだ。

 テキサスの送電網が独立している理由はいろいろと言われるが、以前から州内での石炭や石油や天然ガスなどのエネルギー確保が十分であったことと、州内でエネルギー供給が閉じていれば連邦政府からの介入を受けにくいことなどが挙げられる。米国では各州の権限が大きいので、州内のことであれば州政府が問題を解決する。しかし、ひとたび複数の州をまたぐ問題の場合は連邦政府が介入してくる。よく映画で、犯罪が起こった場合に地域警察とFBIの管轄争いが描かれるが、それはこの理由による。州を越える電力の搬送などは連邦政府の管轄となるので、テキサスでは自分の州内のみで送電するということで、連邦政府からの介入を最小限にしているのだ。

 最近まで、テキサスの電力供給は十分で、問題はなかった。問題が表面化してきたのは、雇用の増加による。米国は景気の後退が続いているが、テキサスだけは雇用が増加しているのだ。そのため、テキサスへの人口移入が増加して、電力消費が飛躍的に増加した。日本ではあまり報道されないが、テキサスでは今年2月に計画停電があり、この夏も電力事情が不安定だった。電力不足が深刻になってくると、二つの警告段階を経て、最悪の場合は計画停電となる。今夏はまだ計画停電には至っていないが、すぐ手前までに達する日も数日あった。原因は一般的な消費増加のほか、まれに見る今夏の暑さだった。筆者はテキサスに住んだことがあるので分かるが、暑さは40度を超える。エアコンなしにはとても暮らせない。

 現在は電力不足解決のため種々の対応策が取られている。テキサスのISO(独立システムオペレーター関連記事)であるERCOTは、休眠中の火力発電所を再開したり、風力発電の利用の増加しようとしたりしている。ところが、この状況をさらに悪化させるかもしれないことが起こっている。二酸化炭素の排出である。

 地球温暖化に関して二酸化炭素の排出が原因とされ、日本もその節減に努力している。日本は国としても地方議会(東京都など)としても、排出を抑える法律が成立している。日本は世界から遅れているという議論もあるが、米国はもっと遅れている。米国では連邦政府としての二酸化炭素の排出制限の法律はない。2009年のキャップ・アンド・トレード法案(二酸化炭素の排出制限と排出権取引)は下院で通過したものの、上院では可決せず廃案となった。その後、経済の停滞も手伝って、この法案は再提出も再審議もされていない。

 廃案となった段階で、連邦政府が取り得る方策は環境保護庁(EPA)が法律なしで、環境保護の立場から空気の浄化を求めることになるだろうと推測された。予想どおり、2009年末にEPAは二酸化炭素を人体に悪影響を与えるものと指定している。これは、大気浄化法の一環として強化された。さらに今年7月、EPAは新たに州間大気汚染節減を命令した。これには二酸化炭素は含まれないが、硫黄酸化物と窒素酸化物の大気への排出を節減することが義務付けられている。この命令は中西部を含む国の東半分に適用される。大気中の汚染物は偏西風に乗って西から東へと飛ぶ。テキサスでの大気中汚染物はテキサスからニューヨークやフィラデルフィアなどの大都市や他の地域に到達するからだ。