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 前回は米軍のイラク解放作戦を例に取って、統合的な計画策定・実行の事例を提示した。本稿を書くまでかなり間隔が空いてしまったが、この数カ月、筆者は何度か被災地を訪れ(写真1写真2写真3)、自治体と意見交換をした。その結果、復興計画を論理的に構築するテクニックを伝えるだけでは、官の復興計画策定・実行を加速させることは難しそうだと感じている。計画実行の前提条件となる「関係組織間のビジョン/目標共有」の弱さが明らかに復興の障害となっているからだ。

写真1●高校時代を過ごした石巻市にて その1(2011年6月18日撮影)
写真1●高校時代を過ごした石巻市にて その1(2011年6月18日撮影)
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写真2●石巻市にて その2(2011年6月18日撮影)
写真2●石巻市にて その2(2011年6月18日撮影)
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写真3●石巻市にて その3(2011年6月18日撮影)
写真3●石巻市にて その3(2011年6月18日撮影)
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 前回紹介した米軍の事例と、今回の震災復興の取り組みとでは、スタートラインに大きな違いがある。米軍の事例は明確なミッションと目標が提示されてから始まっていた。ところが今回の復興では、計画策定・実行・推進以前に、ビジョンと具体的な目標作りがきちんとできていない。連携すべき組織が同じビジョンや目標を共有できていなければ、施策の実行段階で連携が滞ったり、特定のインフラ整備ばかりが進みほかのインフラ整備がなおざりにされたりしてしまう。

 そこで第3回から予定を変更し、今、被災地でどんな組織運営のまずさが復興のブレーキとなっているのか、具体的に指摘しつつ解決への提言を行いたい。連載タイトルとはやや違う切り口とお感じになるかもしれないが、組織が抱えがちな根本的なマネジメント問題を提起するものとしてお読みいただければ幸いだ。

 特に強調したいのは、現地の県庁や市町村に、一貫性のある議論・検討を行えるような組織構造や権限、意思決定プロセスが備わっていないことである。ビジョンや目標の明確性に関して、自治体サイドでは国の方針がはっきりしていないことを強調する傾向にあるが、実は県庁と市町村の間での目標共有にも問題がある。

 そうした組織やプロセスは中央官庁主導で形成されたものだ。それらをまず再構築しない限り、なかなか復興は進まないだろうと断言しておく。

 野田政権が発足し前政権より決定事項が増えてきているようだが、実際のところ、宮城県石巻市に古くからの知人を多く持つ筆者の感覚では、被災者の生活状況改善は遅れている。

問題は「財源」と「国の基本方針」だけではない

 2011年9月現在、マスコミなどで報道されている、「復興が進まない原因」は主に下記である。

(1)財源が決まっていない
(2)国が基本方針を示していない

 これが原因のすべてだとすれば、基本方針と財源が決まれば計画策定・実行がスムーズに進むことになる。だがこの考え方には、少し無理がある。被災した市町村における復興計画の策定状況を冷静に考察してみよう。

 2011年9月11日付日本経済新聞の記事によれば、岩手・宮城・福島の被災3県で被害の大きかった31市町村のうち、「復興計画策定済み」は4市町村(12.9%)、「9月中に策定予定」の市町村は9市町村であるという。つまり、国の方針が明確になっていない現状でも、策定済みと策定予定を合わせると4割強に当たる13市町は計画を策定できつつある。

 とはいえ、被災地の自治体関係者は「国の基本方針や財源が決まっていないことが復興が進まない原因」と考えていることも事実のようだ。筆者が7月下旬にある被災県の県庁を訪れ、復興推進担当部署と意見交換した際にも、下記のようなコメントを聞いた。

 「国が市街地復興の基本方針を明確にしていない。特に市街地復興で、『高台移転』なのか『2線堤(本堤とは別に市街地側に作る第2の堤防)新設』なのか『市街地かさ上げ』なのかという方針が決まっていないことが、復興が進まない最大の制約である」