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 田中淳子氏と芦屋広太氏によるヒューマンスキル往復書簡の第8回。「自分の言葉や意思で部下を褒め、評価する」という芦屋氏の話を受け、部下の立場から、考え方や行動を「自分で選ぶ」ことの大切さや楽しさを田中氏が語ります。(編集部)

芦屋さんへ

 「『俺がしっかり見ている』という上司にこそ、部下は付いていくのではないか」という前回(「会社が評価してくれる」と言うズルイ上司の手紙)、この最後の部分から話を広げてみようと思います。

 もともと、この往復書簡は「30~40代を応援する」という趣旨で始まりました。この年代には、マネジャー(管理職)もいれば、リーダーやメンバーの立場という方もいるでしょう。その人が組織に属している限り、どの役職であっても必ず上司が存在し、誰かの部下になっているはずです。

 部下は、自分の上司の存在とその言動に大きな影響を受けるものです。上司に何をどう言われるか、どう接してくれるかによって、頑張る力が出たり、挑戦する勇気が湧いたりします。逆に、上司の一言や接し方でやる気がしぼんでしまったり、気持ちが腐ったりすることもあるでしょう。

 他者に影響力を持つ上司というポジションになったなら当然、今まで以上に自分の言動を律することが求められます。では、部下はどうでしょうか。今回は部下の立場として、「他人に影響されない自分」について考えてみたいと思います。

愚痴を言っても状況は変わらない

 上司の一言で、部下のやる気が常に乱高下する。部下のやる気は他力本願にならざるを得ない---。

 この考え方は一面、真実でしょうが、ちょっとつまらないように思います。誰かに自分の人生をつかさどられているという印象を受けるからです。

 最近、こういう言葉を何度か見聞きしました。

●今の自分は、過去に自分が選んできた様々なものでできている
●今の自分の状態は、これまでに行ってきた自分の選択の結果である

 この言葉に触れた時、私は衝撃を受けました。「今に至るほとんどすべてのことを自分で選んでいる」という自覚はなかったからです。

 でも言われてみれば、その通り。「今、自分がここにいて、こうしている」のは、自分で選んできた結果なのですから。他者によって何かと困惑させられることはあっても、「どのように対処するか」を決めているのは自分です。

 よく愚痴や文句を言う人って、いますよね。「あのお客さん、前回と今日とで言うことが全然違う。振り回されっぱなしだよ、まったくもう!」とか「一度でいいから、上司に恵まれてみたいものだ」などと。

 顧客や上司の言葉や態度に混乱させられたり、面白くない気分になったりすれば、上司や顧客に文句の一つも言いたくなるのはわかります。だけれども、それらを口にしたからといって、自分の状況は何も変わりません。

 しかも、物事を愚痴っぽく捉える人は、悲観的な思考に陥りがちです。そうなると、満足するポイントを見つけることがますます難しくなりますし、「できない理由ばかりを考える」ようになることさえあります。