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 IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

ITベンダーにて
ダメな“システム屋”の会話 若手“システム屋” 「先輩、相談に乗ってもらえませんか?ちょっと途方に暮れていまして・・・」
先輩“システム屋” 「どうした?」
若手 「入社以来5年間、ずっと流通業界の情報システムを担当してきたのに、今回の人事異動で金融分野に配置転換になってしまいまして」
先輩 「それは大変だな」
若手 「せっかく流通業界のことが分かってきたのに、新人に逆戻りみたいじゃないですか」
先輩 「そんなことはないだろう」
若手 「先輩は流通と金融を両方経験して、さらに様々な分野をこなしてきましたよね。何か秘訣があるのですか?」
先輩 「秘訣はないよ。でも、他業界からヒントをもらう部分はたくさんあるね」
若手 「本当ですか?自分は小売業の受発注システムをやってきましたが、今度の異動先では、保険会社の有価証券投資管理システムですよ。共通点なんて何もないじゃないですか」
先輩 「まあ、そう悲観するな。そんなことはないよ。ユーザー企業の業務や事業を考えるとき、まず土台となるのがその業界のルールだ」
若手 「え?」
先輩 「小売業の発注業務を縛る法律はあまりないが、保険会社は保険業法に縛られるし、有価証券投資は金融商品取引法に縛られている」
若手 「まだ話がよく見えません」
先輩 「一方で、小売業や卸売業には歴史的な商慣習がいっぱいあるが、証券取引は商慣習ではなく法令でルールを決めている。共通する部分があると思わないか?」
若手 「そうかもしれないですね」
先輩 「小売業の情報開示は株主に対するものが重要だが、金融業では金融庁に報告しなければならない書式がたくさんある。これらは省令や通達などを読めば主旨とルールは明確だよ」
若手 「なるほど」
先輩 「小売業の商慣習は相手があることだから簡単に変えられない。金融業の法令も簡単には変えられない」
若手 「なるほど、そう考えれば共通点はあるんですね」
先輩 「どういう方向で競合他社に対して比較優位を生み出すか。ルールを理解したうえで、独創的なことを発想する必要があるね」
若手 「そうですね」
先輩 「それに顧客満足を突き詰めている小売業の発想を金融業に持ち込めば、新たな顧客サービス向上策や、合理化策を発想することだって不可能じゃないよ」
若手 「そうか、言われてみればそうですね!」
先輩 「慣れた業務分野から別の分野に異動するのは、実は損なんかじゃないんだ」
若手 「むしろユーザー企業に、従来の経験を生かした新しい提案ができるかもしれませんね」
先輩 「そういうことだ。異動先でも頑張れよ!」

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ダメな理由:分野をまたぐ異動を悲観

 企業情報システムを扱う“システム屋”を一生の仕事だと考えた場合、キャリアの途中で適用業務分野が変わらないのはむしろ例外でしょう。流通、金融、製造、公共・インフラ、サービス業など、担当するユーザー企業の業種で分類しても、あるいは対象業務の性質などで分類しても、数種類から十数種類を経験するのが、“システム屋”人生の平均像ではないでしょうか。

 私自身は、一般的な33業種(証券コード協議会が策定したもの)のうち自分が経験した業種を数えてみたところ、22の業種を何らかの形で経験しています。

 逆に言えば、数十年に及ぶ長い“システム屋”人生を考えると、ダメな“システム屋”で終わるかどうかは、自分が担当する適用業務が変わった時にその大きな壁を乗り越えられるかどうかにかかっています。業務知識を一から覚えなければならないと悲観する人と、その業務におけるルールと競争要因が何であるかを見抜き独創的な提案をしようと前向きになる人とでは、雲泥の差があります。