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 ソーシャルメディアと相対するための「組織」の作り方については、「ソーシャルメディアポリシー」と同様に、これまで長い間議論の絶えないテーマであった。この組織作りについて現在もっとも多く言及されているのが、昨年Altimeter GroupのJeremiah Owyang氏が“Companies organize for social in 5 ways”という形で紹介しているものだろう。ここで示されている組織パターンが実際の組織作りの参考になるので、今回はこの内容を分析してみよう。

ソーシャルの運営組織は5パターンに分類できる

 同氏は、企業のソーシャルメディア運営について、その運営組織という面で考えると以下の5つのパターンに類型化できるとしている。

  1. Centralized(中央集権型)
  2. Distributed(分散型)
  3. Coordinated(協調型)
  4. Multiple Hub and Spoke(ハブ型)
  5. Holistic(総員稼働型)

図●Jeremiah Owyang氏が示したソーシャルメディア運営組織の5つのパターン
図●Jeremiah Owyang氏が示したソーシャルメディア運営組織の5つのパターン
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 これら5つのパターンは、上記したのダイアグラムで表される。これらを、少し解説してみよう。

1.Centralized(中央集権型)

 戦略、方針、施策、そしてオペレーション内容にいたるまでのすべてを専門部門がコントロールするパターンである。組織として一貫性を持たせられるのが最大のメリットである。だが一方で、柔軟な対応が難しくなるというデメリットも持っている。また、専門部門を設けなくてはならない点が、大きなハードルとなる企業も多いと思われる。

2.Distributed(分散型)

 一部の組織あるいは社員によって自然発生的に始まり、そのまま施策として運営される形態となる。ソーシャルメディアが企業の施策として取り入れられるようになる初期段階において多く見られるパターンでもある。

 ソーシャルメディアそのものに明るく、それなりにユーザーとして経験を積んでいる社員が多い企業で、担当者(部門)がそれぞれ独自に動くことになるのが典型である。個々の施策における瞬発力、そして柔軟性は高いが、全社的に一貫性のある戦略においては非常に難しいアプローチであると考えられる。

 また、このパターンを実践するためには、ソーシャルメディアそのものに明るい社員が多くいることが前提であり、かつ彼らの活動にあたって明確なルールを設けることが必須となってくる。

3.Coordinated(協調型)

 特定の部門にソーシャルメディア戦略全般の舵取りを担わせる形ではなく、ソーシャルメディア戦略に関与する複数部門から、それぞれリード役を立て、そのリード役を中心に各部門が協調して、全社的にソーシャルメディア戦略を運営していくパターンとなる。つまり、「Centralized(中央集権型)」と「Distributed(分散型)」の特徴を併せ持ったパターンだと考えられる。

 主に、当初はDistributed(分散型)で始めたものが、その後体制を整備させた結果として、このパターンを確立するケースが多い。この場合、もちろん関係する部門それぞれにソーシャルメディア戦略のリード役が存在することが大前提になる。ちなみに私が前職時代に立ち上げたのは、このパターンである。

 このパターンにのっとって運営体制を構築していく場合には、連携させなくてはならない部門をきちんと考えることが最も重要となる。たとえば広報関連の部門であったり、あるいは広告・宣伝関連の部門であったり、場合によってはカスタマー・サポート関連の部門などが挙げられるだろう。

 連携させなくてはならない部門は企業、あるいはその企業の組織体制によって大いに異なってくる。多くの場合「企業としての情報の受発信活動に何らかの形で関与する部門」が基準になってくる。

4.Multiple Hub and Spoke(ハブ型)

 ソーシャルメディア戦略のリード役を立て、他部門と協調しながら全社的な活動を行なっていた個々の部門が、それぞれさらに関連する他の部門のハブとなって機能するようなパターンである。「Distributed(分散型)」が、やがて「Coordinated(協調型)」になり、さらにそれが拡大してきた結果確立されるケースが多い。

 これはそもそも組織数が多い、いわゆる大企業に見られるパターンとなる。ただ「Coordinated(協調型)」よりも、必然的に関与する部門が増えてくることになるので、コアとなる部門の連携は、常に緊密であることが求められる。

5.Holistic(総員稼働型)

 ソーシャルメディア戦略におけるキーとなる部門や担当者を設けず、企業に属するすべての社員が一定のリテラシーおよびルールの元に、ソーシャルメディア上で活動を展開していくパターンとなる。基本的には「Distributed(分散型)」の発展型として考えられるが、決定的に違うのは「Holistic(総員可動型)」の場合は“ソーシャルメディアと相対する”という意識が企業文化の奥深いところに既に根ざされているという点である。全社員の意識下に「ソーシャルメディアの適切な活用」が当たり前のように存在している企業の場合に可能なパターンとなる。

 ある意味、企業がソーシャルメディアを活用していくにあたり、このパターンは理想型の一つであるとも考えられる。だが、一部の例外を除くと、ほとんどが従業員規模も小さな企業であることが多い。

現実的なのは「Coordinated(協調型)」

 5つのパターンをそれぞれ紹介してみた。実際に調査を行ったAltimeter Groupでは、これらを類型化するにあたって、業界を問わず企業の140名の「ソーシャル・ストラテジスト」からアンケートを取っている。

 ちなみに、これら5つのパターンで最も多かったのは3.の「Coordinated(協調型)」で、全体の41%を占めている。以下、1.の「Centralized(中央集権型)」が28.8%、4.の「Multiple Hub and Spoke(ハブ型)」が18%、2.の「Distributed(分散型)」が10.8%となり、5.の「Holistic(総員稼働型)」はわずか 1.4% という結果になっている。

 現実的に企業としての運営を考えていくと、3.の「Coordinated(協調型)」が、現在のところ一番現実的なアプローチだろう。そういう点を踏まえ、次回以降は「Coordinated(協調型)」の運営を確立させていくために必要なことを、深く掘り下げていこう。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
バーソン・マーステラ リード デジタル ストラテジスト
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。早稲田大学卒業後、プロミュージシャンを経てIT業界へ。リアルネットワークス、コールマン・ジャパンなどを経て、マイクロソフト(当時)に入社。2009年より同社の「ソーシャルメディアリード」として、ソーシャルメディアマーケティング戦略を確立させたのち、2011年2月よりバーソン・マーステラに入社し、リードデジタルストラテジストを務める。