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ビジネスブレイン太田昭和
会計システム研究所 所長
中澤 進

 東京証券取引所(東証)は2012年春を目標に、業績予想の在り方を検討している。そこでは「自主的に予想を開示するよう促す」方針を採るという。

 業績予想の新方針とIFRS(国際会計基準)との関連について、東証は特に言及していない。この点について、もっと積極的に示してもよいではないかと、筆者は考えている。経営実態に基づく、すなわちマネジメントアプローチによる情報開示は、IFRSの本質的な狙いと言える。業績予想の自主的開示を求めるという東証の方針は、まさにこのIFRSの狙いに通じるものだ。今回は東証の新方針とIFRSとの関連を取り上げる。

ビジネス変化に対応できる開示ルールを求める

 東証は業績予想の新方針を、2011年7月に発表した「上場企業における業績評価予想開示の在り方に関する研究報告」で示した。この報告書で、詳細な検討内容を確認できる。

 同報告書は業績予想開示の意義について、「業績の見通しに関して最も詳細かつ正確な情報を有する上場会社自身が、投資者に対して、その見通しを示すものである」「上場会社と投資者がコミュニケーションをとり、相互理解を図るうえで、有用性が高い」「上場会社と情報利用者との重要な情報格差の解消につながるものであり、証券市場の健全な運営上望ましい」と述べている。

 その上で、「原則的な取扱いにこだわり過ぎる」ことなく、「定型的開示の重要性を確認しつつ、上場会社各社の実情に応じて、多様な方法による柔軟な開示を積極的に行い得るようにすることが望まれる」と方向性を示している。

 東証はすでに決算短信において、売上高、営業利益、経常利益、当期利益、一株当たり当期純利益および配当に関する業績予想の開示を求めている。これらは強制ではないが、実施できない場合には合理的な理由の記載を求めており、実質的に強制に近い状況にある。実際、東日本大震災の影響を除くと、95%以上の企業が対応している。

 この開示ルールは永年の慣行となっており、日本企業の実務に広く定着している。現在でも、日本の開示制度の中で重要な位置づけを占めている。

 では、なぜ東証は開示に関する新方針を打ち出したのか。きっかけの一つは、政府が2010年6月18日に閣議決定した「新成長戦略~『元気な日本』復活のシナリオである。ここでは、昨今の上場企業を取り巻く環境の変化などを踏まえ、金融戦略の一環として「取引所における業績予想開示の在り方の検討」を示している。

 2010年7月には、日本経済団体連合会(経団連)が「財務報告に関わる我が国開示制度の見直し」を公表した。この中でも業績予想開示について、今日的意義、実務負荷の面からの見直しを提言している。

 いずれも、ビジネスがより激しく変動しており、企業自身による先読みがますます困難になっている状況への対応を求めている。加えて、より積極的に情報を開示したい企業が、統一様式に対する不自由さを感じている点も要因の一つとしている。