前回、ソーシャルメディアと相対するための「組織」を、 5つのパターンに類型化して紹介した。今回は、その中でも企業が実際に用いるパターンとして現実的、かつ実現可能性が高いものであり、最も多くの企業で用いられている“Coordinated (協調型)”組織について掘り下げてみよう。
Coordinated(協調型)組織は、特定の部門にソーシャルメディア戦略をコントロールさせる形ではなく、組織横断的にソーシャルメディア戦略をドライブしていくことを前提にしている。そのため、ソーシャルメディア戦略に関与するであろう部門を組織内の広範から選び出していき、それぞれの部門からリード役となるポジションを設け、そのリード役を中心に各部門が協調するやり方となる。わかりやすく言えば、複数部門からの代表者で構成される「ソーシャルメディア委員会」のようなチームを作り、その「ソーシャルメディア委員会」を、企業のソーシャルメディア戦略の意思決定機関として機能させるということになる。
重要なのはチームを構成するメンバー
こういったチームを組織するにあたって、最も重要となってくるのは、もちろんメンバーをどの部門からピックアップしていくか、という点だ。これについては、前回にも触れたとおり、基本的には「企業において情報の受発信活動に何らかの形で関与する部門」というのが一つの基準となってくるだろう。
具体的に言えば、広告・宣伝に関連してくる部門、そして広報に関連する部門がまず考えられるし、Webコミュニケーション関連の部門が独立していれば、そこからも必ずメンバーが選出されてくる。ほかにも例えばブランド・マーケティングなど、一部のマーケティング関連部門からの参画も考えられるし、「情報の受発信」という観点で見るとカスタマー・サポート関連の部門の参画も必要となってくるだろう。
さらに、直接的に「情報の受発信」に関わってくる機会は少ないだろうが、たとえば「ソーシャルメディアポリシー」を考えると、法務関連の部門や人事総務関連の部門の参画も求められてくることになる。特に企業の行動規範や就業規則などと密に連携させた「ソーシャルメディアポリシー」を策定していくためには、これらの部署は不可欠である。さらに、そのポリシーを従業員および関係者たちにきちんと理解・浸透させることを考えると、その役割はより重要になってくる。
こうした点を踏まえながら「委員会」のメンバーを適切な形で組織していくことになる。
どの程度の規模のチームとするかは、その企業において「情報の受発信」に関わってくる部門の数、および企業そのものの規模によって大きく左右されてくる。だが、もちろん最低限企業内にガバナンスを利かせられるだけの規模であることが求められる。つまり、全ての部門が、この「委員会」と何らかの形で縦のつながりないし横のつながりを持つことが前提になる。とはいえ、「委員会」に参画するメンバー (部門) の数が多すぎると、そもそも「意思決定機関」として機能しなくなる可能性が高まってくるので注意が必要であろう。
肝となるのは適切なリーダーを選ぶこと
こういったチームを組織していくにあたって、最も重要となってくるのが「委員長」つまり企業のソーシャルメディア戦略全般のリード役を、どの部門からピックアップするかという点だ。
この「委員長」となるポジションに、どの部門の人間をアサインするかで、その企業のソーシャルメディア戦略の方向性がかなり決定づけられてしまうだろう。いくら「協調型」とはいえ、その組織の中心となりイニシアチブを発揮する人間が、どこの組織に属するかで、その「委員会」の色が決まってしまうケースは多い。そのため、その企業内のパワーバランスなどに大きく左右されてくることにはなるが、あくまで慎重に選ぶべきだろう。
ちなみに筆者が以前に、こういった「委員会」を組織した際には、いわゆる企業サイトの主管部門に属していた筆者が、まず「ソーシャルメディアリード」という立場でリード役となった。その上で、広告・宣伝関連の部門、広報関連の部門、法務関連の部門、そして全社的なトレーニングを管理する部門から、それぞれメンバーを募っている。
さて、ここまで「委員会」を構成するために必要な部門 (代表者) について解説してきたが、次に、その「委員会」に参画する、あるいはリードしていくために求められてくるであろう担当者のスキルセットについて少し考えてみたいと思う。いわゆる「ソーシャルメディア担当者」のスキルセットとなってくるわけだが、次回は、これについて少し触れてみよう。
バーソン・マーステラ リード デジタル ストラテジスト
