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 東経110度CS放送のプラチナチケットを入手するため、HDTV化を目指すチャンネルやこれを機に新規参入を企図するチャンネルなどが熾烈な競争を繰り広げている。とはいえ総務省による許認可事業であり、事前に提示された色々な条件(審査基準)をクリアすることが求められている。諸条件のクリアぶりが全く同じ場合にどちらの事業者を選ぶのかは、視聴需要で決めるというのが総務省の見解であり、その判断材料は視聴者数でなく、視聴料収入だとパブコメの回答で述べている。

 言葉として単純に捉えれば、視聴需要で決めるのは当然のことのように思われる。しかし審査時というある一つの定点を取っての比較になるだけに、事業者側からすれば、それが分かれば苦労しないというところでもある。前にも書いたことがあるが、視聴料収入と言っても単価100円で視聴者が1万人いる場合と、単価1万円で視聴者が100人しかいない場合に金額は同じであり、どちらを優先させるか難しい。総務省からサプライヤー各社に向けて開かれた説明会でも、この点に言及されたようだが、サプライヤー各社の受け止め方は、視聴者数よりも売上高が重視されるのかといった感じであった。

 しかし、その受け止め方も微妙に違っているように思われる。その理由は、サプライヤー側のチャンネルの売り方のスタイルが2通りあるからだ。利益重視ということであれば、スカパーを通じた配信が最も効率が良い。もちろん、三波共用機が広く普及したこともあり、110度CSつまりe2への参加も大きい。一方で、ケーブルテレビ各社のベーシックパッケージに入るための努力も大変なものである。最大手のJ:COMのベーシックパッケージに組み込まれれば、250万件近い視聴可能者が得られる。ただし、それらは、あくまでも視聴可能者でしかなく、実際に見られているかどうかによらず、1件当たり幾らというアロケーションが得られる。

 この見られていなくても収入が入ることが話を厄介にしている。ケーブルテレビ局からすれば、スカパーなどを通じて視聴者が自ら契約するのとは、状況から何から全く違うということで、1件当たり5円とか10円という設定になることも多い。

 そうした慣習ができた当時は、アロケーションは低いかもしれないが、視聴可能世帯が大きいことを理由に、広告収入が得られるから良いのではないかとも言われた。ただし、それから十数年が経った今、広告収入への力点は明らかに後退している。広告スポンサー各社も、視聴可能件数と視聴件数の間に大きな違いがあることを知っている。ある意味そこでCM展開にも魅力があるとすれば、ネット系の銀行、損保やダイエットのための器具、健康食品を取り扱いやすいところであり、市場の拡大には限界がある。見られていても見られていなくとも、確実に1件当たりの単価を徴収できることはサプライヤーには大きな魅力だ。そういう意味では視聴可能世帯数よりも、視聴料収入の絶対額の方を見るという総務省の考え方も頷ける部分がある。今回の方針を契機に、ケーブルテレビ局からのチャンネル買い叩きや、それを受けてもベーシックに残ろうというスタンスが必ずしも正しくないという認識が広がれば、多チャンネルのサプライヤー各社の意識改革につながるようにも思われる。

 今回の比較審査時の視聴需要をチェックする場合に、もう一つ問題となりそうなのが、古くからやっていて、最近は伸び率が鈍化しているところと、つい最近になって始めたばかりだが、視聴者数を急激に伸ばしているところとあって、審査時の視聴料収入が同じだった場合に、どちらを優先するかということだろう。恐らく、その両者の決戦投票ということになったら、現段階での伸び率の大きい方が優先することになると思われる。総務省としても、マーケットが拡大していく方向を目指すはずだろうだからだ。もちろんそこにも異論はあって、加入者の伸び率は小さくても、一時的な人気で加入者を集めたところよりも、安定的に一定の加入者数を維持している方を優先すべきだという意見もあろう。視聴需要が重要なことは間違いないが、それを判断する物差しが正しいかどうかは、判断が分かれるし、必ずしも今回の認定で採用された考え方が今後も続くとは限らない。

 全ては今回の東経110度CSの認定結果を待つばかりだが、今後の審査基準としても活きていく可能性がある以上、最も重要な審査項目であることから、正確な判断基準はどうあるべきかという議論は引き続き続けていく必要が大いにある。