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 タイの大洪水の影響が、IT業界でも表面化し始めた。タイは世界のHDD装置の4割強を生産しているが、洪水でサプライチェーンが寸断されたことにより、生産能力が大幅に低下している。米IDCはHDD不足により、2012年1~3月期のPC世界出荷台数が同社の当初予測より20%以上落ち込む可能性があると発表した。

 洪水により、世界中のPCメーカーが戦略の練り直しを迫られている。11月中旬時点では、「過去に調達したHDD在庫があるので、当面は問題ない」(NECパーソナルコンピュータ)と多くのメーカーが平静を装う。だが、あるPCメーカーの広報担当者は気を引き締めるようにこう話す。「今後数週間のうちに、HDDの供給に影響が出るだろう。顧客への影響を最小化するために、サプライヤーと一緒に最善の方法を考える必要がある」。むしろこれから状況が悪化するというのが、業界の共通認識だ。

 懸念するのも無理はない。11月に入りHDD不足が顕在化しているからだ。HDD生産世界3位の日立グローバルストレージテクノロジーズでは「工場の浸水はまぬがれたが、モーターなど部材調達が滞っており操業が難しい」(広報)。フル稼働に戻せるのは年明け以降だという。最大手の米ウエスタン・デジタルなども大幅減産に追い込まれている。

 テクノ・システム・リサーチ(TSR)によると、2011年10~12月期の世界HDD出荷台数は1億2400万台にとどまり、前四半期比で約3割減る見通しだ()。2012年1~3月期も過去2年に比べて大きく落ち込むと予測する。

図●HDDの世界出荷台数の推移
図●HDDの世界出荷台数の推移
出所:テクノ・システム・リサーチ

 そのため12月以降、過去に調達した在庫を切らしたPCメーカーが、HDDを奪い合う状況が生じるとみられている。TSRの馬籠敏夫シニアディレクターは「デスクトップPCで主に使われる、3.5インチHDDの供給が特に厳しい」と分析する。

 PC販売の現場では、既に影響が出ている。「年明け以降に納品する法人向けPCについて、納期や数量を確約できないメーカーが出始めた」とガートナージャパンの蒔田佳苗主席アナリストは指摘する。年度末の3月までにPCの導入を予定する企業のシステム担当者は、早めに購買戦略を見直す必要がありそうだ。